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JR東日本、JR東海、JR西日本、JR九州――上場4社の特徴や採用情報を解説

今回はJRグループの中から、決算短信シリーズでも解説した上場済みの4社について簡単にその共通点や、違いとなる特徴、採用情報の一部を解説します。
詳しい解説は個別の記事にありますので、気になった方はぜひそちらの記事も参照ください!

共通点

①生い立ち

JRの共通点のひとつは、その生い立ちです。
かつての日本国有鉄道(国鉄)が分割民営化されたことで、1987年4月1日にJR各社が誕生しました。

今回の記事で取りあげるJR東日本、JR東海、JR西日本、JR九州の4社も、この時に設立されています。なお、JR各社の生い立ちや共通点に関しては以下の記事でも取りあげていますのでぜひ参考にしてみてください。

JRは施設や車両、人員といった国鉄から引き継がれたモノ・人を活用しながら、国鉄時代には制約が多かった鉄道事業以外の事業(いわゆる非鉄道事業)の展開へ乗り出していきます。

駅ビルに商業施設を充実させたり、車両基地や貨物駅の跡地を大規模に再開発したり、ホテル経営に乗り出したりといったように、流通業や不動産業、ホテル業などの領域で新しい取り組みが見られました。

②業務内容と採用区分

業務内容について、まず最初にお伝えしたいのは「ずっと○○だけやりたい」という考え方だけでは鉄道会社への就職(入社後のキャリア形成)は苦労する、ということです。

数多くの卒業生を鉄道業界に輩出している岩倉高等学校の大日方教諭も以下のインタビュー記事で触れていますが、JRを含めた鉄道会社には鉄道以外にも様々な事業領域があります。鉄道事業の中でも様々な系統があります。

希望する内容があるのは素晴らしいことですが、それだけに拘るのは、長い目で見たときに自らの可能性を狭めることになります。

また、JR各社は志望区分や会社ごとに程度の差はあれど、いずれも人気企業です。

選考を受ける際には、幅広い視野を持ったほかの志望者と比較されることになります。視野が狭かったり、短期的なキャリアしかイメージできていない場合は不利になる可能性もあります。

JRに限らず、鉄道会社に入社するなら、ある程度は業務の幅に対応できる方が良いでしょう。それでも鉄道にだけ携わりたいという方ならエリア職やプロフェッショナル職といった採用区分が向いています。
それとは反対に、エリアを問わず企画部門などでの活躍が求められる総合職での採用は、様々なことに興味を持つことができる方に向いています。

なおJR各社の採用区分は「エリアや業務内容不問の区分」「エリア・職種がある程度限定される区分」の2つに分かれているのが基本ですが、JR東海の「アソシエイト職」のように細かな区分を設けている場合や、JR九州のように最終学歴による区分を設けている場合があります。

そして、複数の区分を併願できるかについては会社ごとに異なるので、募集要項をよく確認しましょう。

なお、業務内容によってはJRではない会社を選ぶという選択肢もあります。たとえば駅業務でいえば、ニュースでもたびたび取りあげられるようにJRでは駅窓口の減少傾向が続いているほか、窓口以外の業務についても駅業務を専門に担うグループ会社へ委託する例が増えています。

駅でずっと働きたいという方は、JRそのもの(いわゆる『本体』)ではなくそれらのグループ会社への就職を選択肢に入れるのがおすすめです。福利厚生も本体と同等かそれに近い手厚さの企業も多くあります。

JR東日本の特徴と採用情報

JR東日本の特徴は、首都圏における収益力と、新しい領域への挑戦です。
東北、関東地方を中心に路線を保有していますが、その営業収益の多くは首都圏で稼ぎ出されています。

鉄道はどこでも大事なインフラですが、人口が集中する首都圏の日常を支えられることはJR東日本を目指す動機となるかもしれません。

そんなJR東日本ですが、営業収益の約3分の1はいわゆる「非鉄道事業」であり、様々な事業を展開しています。

内訳としては不動産業やホテル業、流通業などがあり、沿線に住んでいる方には馴染みのあるメトロポリタンホテルズやJR東日本ホテルメッツ、NEWDAYSといったブランドを展開しています。

近年ではグループ共通のポイントサービスとなったJRE POINTを軸に、クレジットカードや小売店、オンラインきっぷ販売などの様々なサービスを横断した「生活サービス事業」に力を入れています。

そのほか、海外展開にも力を入れているのが特徴のひとつ。ロサンゼルス、パリ、ロンドン、シンガポールに事務所を設け、鉄道事業においてもそれ以外でも、現地での事業展開や技術支援など幅広い活動を行っています。

JR東日本について、詳しくはこちらの個別解説記事をご覧ください!

JR東日本の採用区分と採用計画数

2025年の新卒採用においては総合職、エリア職、ジョブ型の3つの採用区分があります。
総合職はエリアやフィールドが不問であり、ジョブローテーションを重ねながらグループの経営を担っていくための経験・知識を蓄えることを期待される採用区分です。

エリア職は、複数の支社をまとめた首都圏エリアのほか長野支社、新潟支社といった支社ごとのエリア内での勤務が基本となる採用です。
エリアの区分は年度によって変わる可能性がありますが、総合職との基本的な違いについてはQ&Aにある以下の内容が分かりやすいかと思います。

Q 車掌・運転士になりたいのですが。
車掌・運転士業務にじっくりと取り組むことを希望される場合は、エリア職の駅・乗務員の仕事を選択することをおすすめします。
総合職においても、職種によっては車掌・運転士の業務に従事する機会はありますが、支社・本社の企画部門やグループ会社などのさまざまな分野で、活躍していただくことを期待しての採用となります。

「Q&A|採用情報:JR東日本」より引用

また、車掌や運転士ではなく駅での勤務のみを希望する人に向けては以下のような内容で回答があります。

Q 駅でずっと働きたいのですが。
エリア職の駅・乗務員は、車掌や運転士など幅広く活躍していただくことを前提とした採用です。駅での勤務を希望される方は、希望する勤務地や雇用形態に応じて、駅業務の採用を行っているグループ各社((株)JR東日本ステーションサービス、JR東日本東北総合サービス(株)など)にご応募ください。

「Q&A|採用情報:JR東日本」より引用

総合職、エリア職いずれの区分でも入社後は駅などで応募する区分に迷ったときは、中長期的にどのような仕事に携わりたいかをしっかりと考えましょう。

採用計画数(医療職を除く)については

総合職・エリア職:約420名
ジョブ型:新卒・既卒あわせて数十名程度
※新卒採用、経験者採用ともに20%程度を総合職として計画。
※ 高専採用についても積極的に採用。
※ 新卒採用のうち60%程度をエリア職の大卒等、20%程度をエリア職の高卒採用として計画。

JR東日本「2025年度採用計画について」(2024年3月1日)

としています。

JR東海の特徴と採用情報

JR東海の特徴は、やはり東海道新幹線の圧倒的な収益力です。企業としての収益の大半は鉄道事業の収益によって構成されており、上場済みのJR他社や大手私鉄各社と比較してもその割合の高さは際立っています。
なおJRの中では営業収益がJR東日本に次ぐ規模で、3位のJR西日本とは近い2位です。

東海道新幹線の収益力が極めて高いために、営業収益において非鉄道事業の占める割合は小さいですが、流通業や不動産業といった事業を営んでいます。

本社が所在するほかジェイアール名古屋タカシマヤが入居するJRセントラルタワーズやJRゲートタワーといった高層ビルがそびえる光景は、名古屋駅のランドマーク的存在です。

海外展開では高速鉄道の技術支援やシステム輸出に力を入れています。

日本型高速鉄道システムを採用している台湾高速鉄道を運営する台灣高速鉄路公司に対して技術コンサルティングを実施してきたほか、2023年11月にはさらなる協力関係の強化を目的として、人材交流などに関する覚書を締結しています。

アメリカでもダラス~ヒューストン間の約380kmを結ぶ「テキサスプロジェクト」において東海道新幹線をベースにした高速鉄道の輸出に向けて活動しているほか、ワシントンD.C.~ニューヨーク間を結ぶ「北東回廊プロジェクト」においては、山梨実験線などで培ってきた超電導リニアの技術をプロモーションしています。

JR東海の採用区分と採用計画数(2025年度)

2025年の新卒採用においては総合職プロフェッショナル職アソシエイト職の3つの採用形態があります。

総合職はグループのさまざまな部門でマネジメントに携わることが求められる一方で、プロフェッショナル職は主に鉄道部門での活躍が求められます。総合職はもちろん、JR東海においてはプロフェッショナル職もJR東海の営業エリア全域にわたるのが特徴です。

一方で、アソシエイト職は東京地区や静岡地区、名古屋地区、関西地区といったエリア限定でオフィス部門の業務を担うことが求められる採用区分となっています。

採用計画数(医療職を除く)については

総合職(大学卒):約80名
プロフェッショナル職(大学・高専卒):約290名
プロフェッショナル職(短大・専門・高校卒):約210名
アソシエイト職(大学卒):約20名
※大卒には大学院卒を含みます。

JR東海「2025年度採用計画数について」(2024年3月1日)

としています。

なおJR東日本と同様に、JR東海にもエリア内の駅業務を担うグループ会社(東海交通事業)があります。東海交通事業で駅係員として勤務している方へのインタビュー記事をnoteにて掲載していますので、ご覧ください!

JR西日本の特徴と採用情報

JR西日本の特徴は、近畿圏の収益と関連事業の相乗効果です。

京阪神間などではライバルの私鉄と並行する区間も長いですが、新駅の設置による利便性の向上や、速達性に優れる新快速の運行といった輸送サービスで差別化を図っているほか、関西国際空港へのアクセスの一翼を担っています。

近年では「ライフデザイン分野」として位置付けている不動産、SC、地域・まちづくり、デジタル戦略などの領域では、駅周辺の不動産開発やホテル事業(『ヴィアイン』など)などに力を入れてるほか、JR西日本のグループ共通ポイントとして導入したWESTERポイントや、様々なサービスを統合した「移動生活アプリ」WESTERアプリなどを展開しています。

JR西日本の採用区分と採用計画数(2025年度)

2025年の新卒採用においては

  • 総合職採用

  • 高専卒採用

  • プロフェッショナル職採用

の3つの採用区分があります。

総合職採用は、院卒・大卒・高専卒向けの「事務・創造系、技術系(運輸・IT)」と院卒・大卒向けの「技術系(車両・土木・建築・駅機械システム・電気)」の2系統に分かれており、高専卒で後者の系統を志望する方が「高専卒採用」に回ります。
勤務地は営業エリア全域です。

プロフェッショナル職採用については、運輸系統と技術系統に分かれています。府県単位を基本とするエリアを選択し、そのエリアを中心に勤務するのが基本です。

採用計画数については

総合職採用:約80名
高専卒採用:約80名
プロフェッショナル職:約650名

JR西日本「2025年度採用計画について」(2024年3月1日)

としています。
なお、引用元のプレスリリースにもある通り、2024年度採用については当初の採用計画数から見直しが発生しており、2025年度も同様の事象が起きる可能性はあります。

JR九州の特徴と採用情報

JR九州の特徴は、事業の多角化を強力に押し進めてきた点です。JR九州の2023年3月期の営業収益において鉄道事業を含む「運輸サービス」のセグメントが占める割合は約3分の1にとどまっており、これはJR上場4社では最も低い割合です。

非鉄道事業について、不動産業や流通業の領域を積極的に開拓して多くの収益をあげています。小倉に始まり、長崎、博多など主要駅の周辺で開業してきた商業施設アミュプラザが典型的な例です。

鉄道事業においては合理化を強力に推進しており、きっぷのネット販売を充実させたり、香椎線では動力車操縦者免許を持たない係員による自動運転(GoA2.5)を2024年3月から開始したりといった施策を行っています。

JR九州の採用区分と採用計画数

2025年の新卒採用においては

  • 大学卒・高専卒採用(院卒を含みます)

  • 短大・専門学校・高卒採用

の2つの採用区分があります。以前は他社と同様に総合職と専門職という職種による区分を設けていましたが、2024年度採用から現在のような区分となりました。ただ採用ページの記述を見る限り、現在の区分においても募集職種の内容に違いはあります。

採用計画数については

大学卒・高専卒:約60名
短大・専門学校・高卒採用:約110名
プロフェッショナル職:約650名

JR九州「2025年度新規採用計画について」(2024年2月22日)

としています。

上場4社以外のJR

今回の記事では、決算短信シリーズでも解説しているJR上場4社についての解説を掲載しました。

JRグループには、ほかにも鉄道事業を担うJR北海道JR四国JR貨物の3社や、みどりの窓口などで切符の販売に用いられている"MARS"で知られる鉄道情報システムといった企業があります。

みなさんが自身の働きたいエリアや挑戦したい領域にあわせて、様々な選択肢があることを踏まえた企業選びをできるように、鉄道就活応援隊のnoteやX(旧Twitter)ではそれらの会社についても随時情報を更新していきます。

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まとめ

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文章および特記のない写真:交通新聞社
※記事中の情報は、この記事を公開した当時のものです。