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【ダイナミックプライシング導入/東京メトロの5G活用に向けた実証実験など】鉄道業界 就活生が気になるプレスリリースまとめ【2024年1月】

気付けば1月も終わり、就活関係の動きも慌ただしい時期ですね。

鉄道就活応援隊のX(旧Twitter)では、鉄道業界各社のプレスリリースから就活生向けの話題をピックアップして、不定期にお届けしていますが、今回の記事では、2024年1月に鉄道に関わる事業者から出されたプレスリリースをピックアップ。140字の制限があるX(旧Twitter)では伝えきれなかった事象も加えながらお届けします。

プレスリリースを読むのは単なる情報収集だけではなく

・企業がどういった考えで施策を打っているのか
・自分の目指すことと、その企業の考えに重なるところがあるか

といったことを探るのにも有効です。ぜひお役立てください!

なお、見出しの日付は今回からプレスリリースの発表日に改めています(従来は鉄道就活応援隊でツイートした日)のでご注意ください。
それではどうぞ!


1月23日 JR北海道 ネット予約商品のリニューアルを発表

【こんな人向け】収益最大化の一環としての営業施策に興味のある人
【解説】鉄道とダイナミックプライシング
高速バスや航空機の座席については、早期に予約した乗客に対して割引率を高く設定する、いわゆる「早割」が多くみられます。
また、過去の実績やAIの予測を活用して発売価格を弾力的に変動させることも一般的に行われています。

この、時間帯や曜日、需要予測と供給量のバランスなどによって価格を変動させる施策をダイナミックプライシングと呼び、提供するサービスの価格や供給量をコントロールすることで、得られる収益を最大化する「収益管理(レベニュー・マネジメント)」という概念が背景にあります。

バス業界や航空業界において普及した印象のあるダイナミックプライシングですが、国内の鉄道においても先行例はあります。

たとえば「早割」については、オンラインでの発売を中心に、予約する時期によって割引率を変動させた商品が設定されるようになりました。

また、時間帯別の運賃については、通勤輸送の分野で先例があります。
JR東日本が時間帯限定の割安定期券「オフピーク定期券」を発売した例や、東京メトロが自社グループのポイントサービス「メトポ」を活用して実施した「オフピークプロジェクト」がこれにあたります。

一方、需要予測に基づいた細やかな価格設定の例は乏しく、在来線特急や新幹線における指定席の発売について「最繫忙期」「繁忙期」「閑散期」といったシーズンごとの変動要素はあるものの、その価格差は数百円の差に留まるほか、リアルタイムの需要予測によって発売価格を変動させるような商品の設定は行われてきませんでした。

今回JR北海道が発表した中で特に注目すべきポイントは、オンライン予約サイト「えきねっと」において、その時点における一部の特急列車の混雑具合の予測によって設定価格を変動させる商品の設定を行う、と発表した点です。

プレスリリースより引用。多段階の割引率設定が行われている。

また、JR九州においても、九州新幹線の博多~熊本間のネット予約商品「九州ネット早特7」に価格変動制を導入する実証実験を行うという発表がありました。

「お客さまの過去の乗車率に応じて列車毎に異なる価格のきっぷを発売し、きっぷ発売後もお客さまのご予約状況に応じて価格を変更することで、柔軟な価格設定を実現する」

https://www.jrkyushu.co.jp/yoyaku/dynamicprice/ より

とのことです。実証実験は2024年3月1日乗車分から2024年6月30日乗車分までの期間限定ですが、成果次第では本導入も期待されるところでしょう。

需要予測に基づいて適切に価格を変動させる商品の設定には、収益を最大化できる可能性があるとされます。また、乗客にとっても平均価格の下落といった点でメリットがあるとされます。

リアルタイムでの需要予測に基づいたダイナミックプライシングが今後他社に広がっていくのか、今後に注目です。

1月24日 東京メトロほか 国内初の5Gを活用した鉄道システムの実証実験を今年度に開始することを発表

【こんな人向け】電気通信系の専攻および関心のある人
【解説】鉄道における5Gの活用と無線列車制御
鉄道における5Gの活用が多くの可能性を秘めていることがよく分かるプレスリリースであったと感じます。

実証実験の詳細は省略しますが(ローカルとパブリック双方の想定がなされている点などは注目です)、重要なポイントの1つ目は将来的な活用イメージとして

「CBTCを始めとする高度な列車運行システムにおける地上と列車間のデータ伝送」
「CBM等における各種センシング技術から得た情報の分析基盤への伝送」「列車内および地上のカメラ映像を相互かつリアルタイムに伝送」

など多彩な例が挙げられていることです。

CBTC(無線式列車制御)は、東京メトロが丸ノ内線での走行試験を実施してきたほか、2028年度には相互直通運転を実施している東急田園都市線・東京メトロ半蔵門線の信号保安システムへの導入が予定されています。

無線通信技術により列車の位置や速度を把握することで列車の衝突を防ぐ
CBTCは、従来用いられてきた「閉塞」という概念に由来するシステムと比較して、地上設備が大幅に省略できるため、システムの維持や、列車の運転間隔を短縮する際などに必要なコストが軽減できるメリットがあります。

また、「列車内および地上のカメラ映像を相互かつリアルタイムに伝送」することで、車内の安全性の向上が期待されます。

このように5Gの活用には大きなポテンシャルがあり、実験の目的として東京メトロが掲げる

(1)汎用性の高い5G を活用した鉄道用通信基盤の実現
(2)鉄道用通信基盤システム共通仕様(案)の作成および公表

が実現すれば、今後の鉄道業界における大きな変革が実現されるものと期待されます。

今回採用する通信基盤はFRMCSを参照したものであり(FRMCSは、欧州諸国を中心に仕様検討が進む鉄道向けの無線通信システム)国内向けの仕様確立に向けた検討、国際標準化への対応が実現すれば、国内にとどまらず欧米をはじめとした世界各国への広がりも期待される、夢の大きな話です。

今後の動きに注目したいところです。

【関連記事】

1月25日 JR西日本 山陽新幹線 新大阪~博多間の車内販売についての変更を発表

【こんな人向け】車内販売で働くこと・列車内のサービスに関心がある人
【解説】車内販売の縮小と変化
2024年3月16日以降、新大阪~博多間の「のぞみ」の一部列車で実施してきた車内販売が縮小。普通車での車内販売が終了します(グリーン車については継続)。

特急列車や新幹線での車内販売は長期的に縮小傾向が続いており、その旨を告げる各社のリリースにおいては、飲食物が駅およびその周辺で気軽に入手できるようになったことや、要員不足などが理由として挙げられています。今回の発表もまた同様です。

山陽新幹線と接続する東海道新幹線の東京~新大阪間についても、2023年10月をもって「のぞみ」「ひかり」で実施されていたワゴン販売が終了。グリーン車においてはモバイルオーダー形式で継続されるものの、普通車での車内販売は終了していました。

新幹線や在来線特急などで実施されてきた飲食物の車内販売については現在もJR東日本が一部列車で実施していますが、今後の鉄道においては、観光列車の付加価値として沿線の産物を販売するようなタイプの車内販売が中心となっていくものと思われます。

1月29日 横浜市交通局など 市営地下鉄全40駅でのクレジットカード等によるタッチ決済の実証実験を発表

【こんな人向け】デジタル乗車券サービスに興味のある人
【解説】導入進むQRコードを利用した乗車券サービス
先月の記事でもスルッとKANSAI協議会の「スルッとQRtto(クルット)」を紹介したところですが、こちらは国内の交通事業者で導入・実証実験が相次ぐ、タッチ決済を活用した交通事業者向け決済ソリューション「stera transit」を活用したものです。

鉄道就活応援隊のX(Twitter)およびnoteでもたびたび取り上げていますが、タッチ決済の導入は特にインバウンド需要への対応として注目されており、今後も導入および導入に向けた実証実験が相次ぐと思われます。
注目ですよ!

終わりに・関連リンク

2024年1月のプレスリリースまとめは以上になります。
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前回(2023年12月)のプレスリリースまとめはこちら

香椎線における営業列車でのGoA2.5レベルの自動運転開始や、九州新幹線と高速バスB&Sみやざきを使用した貨客混載実証実験などについて取りあげています。

2024年1月の鉄道就活応援隊記事一覧はこちら

2024年1月更新分の記事がこちらからチェックできます。
身近だけれど意外と知らない踏切の安全を守る技術・企業の記事や、東京メトロの海外事業についての記事橋りょうなどのインフラに関わる工事の施工管理で活躍する方へのインタビュー記事など、内容盛りだくさんです。
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