「ペンキを塗る会社……ではなく、施工管理を行う会社です」【社員インタビュー:建設塗装工業・施工管理】
鉄道に関わるお仕事に携わっている方へインタビューを通じて、その仕事についてのお話を伺う「鉄道ゲンバ最前線!」。
第17回目となる今回は建設塗装工業株式会社にお邪魔しました。
今回お話を伺うのは、JR東日本の橋梁のメンテナンス工事の施工管理を担う渡邊さんと佐々木さんです。
佐々木さんは若手のホープで渡邊さんのもとで業務を学んでいます。今回は、若手の佐々木さんを中心にお話しを伺いましたので、入社して3~4年くらいのキャリアイメージが掴めるのではないかと思います。
それではどうぞ!
自己紹介と建設塗装工業入社のきっかけ
――本日はよろしくお願いいたします。早速ですが、自己紹介と入社のきっかけなどをお聞かせください。
渡邊 入社14年目の渡邊和哉(わたなべかずや)です。東京支店 施工部に所属しています。本日はよろしくお願いいたします。今日は佐々木さんが主役だから、彼中心に話を聞いてください!
佐々木 同じく佐々木望(ささきのぞむ)です。入社して4年目です。本日はよろしくお願いいたします。
私は東北地方の工業高校出身ということもあって、学校に求人があったのがきっかけです。また、学生時代にお世話になった先輩が入社していたこともあり、なんとなくどんな会社なのかイメージがついていたというのも大きなきっかけでした。
渡邊 以前、東北支店に所属していたのですが、その時に彼の先輩と一緒でした!
私も学生時代に土木工学や都市工学を専攻していて、その知識を活かせる仕事に就きたいと思ったのがきっかけです。そんな時に建設塗装工業を知り、いかにも「東京の下町、神田らしさがある会社だな」という雰囲気が印象的で気に入りました。また、採用担当の方がとても人情味がある方だったのも大きなきっかけかもしれません。
佐々木 結局入社以来、高校の先輩と同じ職場になったことはないのですが、それでも渡邊さんをはじめ、頼りがいのある先輩たちに支えられて、特に不安はありませんでした。
「施工管理」について教えてください
——現在、どのような業務に携わっていますか。
佐々木 「施工管理」という業務が主な仕事です。クライアント様や関係各所に提出するために、工事に関係する各書類の作成や工事日程の調整、弊社以外の協力会社との日程調整やそれに対するクライアント様からのご要望の調整を行います。また、役所などに届け出が必要な許可申請なども行います。
「建設塗装工業株式会社」という社名から、ペンキを塗る会社というイメージが持たれがちですが、実際には工事全体の施工管理を行うなど、工事施工に関わるあらゆる業務を包括的に請け負っています。
——施工管理業務の大変なことや気をつけていることを教えてください。
佐々木 関係各所の調整でしょうか。例えばクライアント様からは「この日程までに施工して欲しい」とご要望をいただくとして、実際に作業に当たる現場や協力会社の方々からは「いや、この工程ならこの日程じゃないと難しい」といった、現場目線の意見も上がってきます。その双方の折り合いをつけるといった調整はやや大変ですね。
どんな工事をするのか、そのためにはどんな機器や材料を用意するのか、作業者は何名必要なのかなどをまとめ、クライアント様に「保安打ち合わせ表」というものを提出しています。協力会社も多忙なことが多く、スケジュールをいただくのが大変なこともあって、そのあたりの調整に苦心することもあります。
渡邊 そのほか、肝心なのが「この工事にいくらかかるのか」という「お金の管理」です。彼は入社から4年目ですが、現場からの信頼も厚く、2~3千万円程度の中規模の工事計画であれば、予算管理を含めて1人で任せることができるスキルをすでに身につけてくれています。
佐々木 作成する書類は役所や警察署に提出するものも多く、法令や工事の安全にかかわる重要なものばかりです。そのため、内容や書き方に不備があると不受理となり再提出が必要になります。
工事の施工に欠かせない「足場」の組み立て設計には、労働安全衛生法88条というものが関係し、事前に工事の計画内容を所轄労働基準監督署長に届け出る義務があります。そこで、担当の方に足場の安全性を確認してもらうわけです。この時に「もっとこうしたほうがよい」というアドバイスをもらって再提出になることもあるのですが、初めて1人で提出しに行った際は非常に緊張しました。
渡邊 再提出になることはベテランになってもままあるので、仕事の失敗、というレベルのものではありません。彼は再提出になってきた時も、ただ帰ってきただけでなく、「なぜだめで、どう改善すべきなのか」というものをしっかりと持ち帰ってきてくれたので、入社からまだ年月が浅いのに頼もしいなと思いました。
佐々木 どんな小さなことでも「報告すること」、ここに気をつけています。報告をしていれば、例えば自分が不在でもほかの人が業務を進めることができたり、問題を速やかに対処したりすることもできるからです。
実際に働く様子を教えてください
——一日のスケジュールを教えてください。
佐々木 状況によって残業をすることもあります。また、上司と一緒に深夜勤務を行うこともあります。
渡邊 深夜勤務がある日のスケジュールです。深夜勤務は月に2~6回程度あります。
——仕事をする上で心がけていることはありますか。
佐々木 入社時から「メモ」を取るようにしていました。最初は本当にメモ書き程度だったのですが、今では責任ある仕事も多くなって来たので、するべき仕事を忘れずに行うために「チェックリスト」のような形式にして、うっかりミスを未然に防ぐように工夫しています。
渡邊 先輩から「ダサい仕事はするな」と教わりました。“忙しいせい”にするとか、“仕事が遅いせい”にするとかは避けるようにしています。
あとは上下関係でしょうか。弊社は佐々木さんのように高卒入社と私のように大卒入社のパターンがあり、高卒入社の方も少なくありません。そうすると実年齢は年下だけど、入社が先で社内では先輩、ということもままあります。
それでも、やはり入社が先の人のほうが実務についてはどうしてもできることが多いので、仕事を教わる、教えるというシーンでは年齢の差は一旦置いておいて、しっかりとコミュニケーションを取ることが大事かなと感じています。
佐々木 私は入社4年目ですが、すでに仕事を教える立場になることも多く、年齢は上だけども後輩、という方もいます。少し緊張はしますが、敬語でコミュニケーションをとって普通に会話しています。
また、目上の方に業務の依頼をすることがほとんどなので、目上の方への接し方という点ではしっかりと意識して行っています。
配属や研修のことを教えてください
——研修ではどのようなことを学びましたか。
佐々木 入社後には社会人としての基本的なルールや知識を学び、「塗装工事とはなにか」や初歩的な塗装作業の実技などを受けました。実は現場で実際に塗装の作業を行う、という業務については体力面や技術面などから少し自信がありませんでした。
しかし、そうした現場の仕事は弊社のごく一部の面でしかないということを知り、自身の得意分野かもと感じていた施工管理の業務に就いています。
もちろん、現場にも行き、実際の工事に立ち会うこともあります。実際に工事に携わってくださる方々とのコミュニケーションはやっぱり欠かせません。
例えば、ベテランの職人さんの中には言葉の表現がきつい方もいらっしゃいます。私も正直、「現場の人って怖い」というイメージが強かったです。
ただ、何度も顔を合わせるうちに「言い方はきつくても怒っているわけではない」と分かってくるようになり、その人なりの言い方なのだと、みなさんの性格のようなものが分かってきます。
そうなるためにも、研修で学んだことのほかに、しっかりとしたコミュニケーションが大事なのかなといつも思っています。
――佐々木さんは東北出身ですが、最初の配属は東北支店だったのですか。
佐々木 当初は「地元の会社で働けたらいいな」と思ってこの会社を選んだということもあったのですが、配属は東京支店となりました。東京支店は主に東京、神奈川エリアを担当しています。
渡邊 特段転勤の多い会社、というわけではありませんが、私は入社後、東北支店に配属されました。そこで一通り施工管理の業務を学んだ後に東京支店に異動となりました。
佐々木さんのように「地元で仕事をしたい」などといった要望は自己申告書*に明記することで、人事異動時の参考にはしてくれるので、要望が叶う可能性もあります。ただ一方で、優秀な人材なので東京支店としてもいて欲しいし、東北支店としてもぜひ来て欲しい、そんな人材でもあって——。
それから、コミュニケーションはやっぱり欠かせません。新入社員が入ってくると仕事の話はもちろんですが、好きなものとか尋ねてみるなど、数時間くらい雑談をしますね(笑)。
佐々木 私の時もそうでしたね(笑)。
学生時代のことを教えてください
——学生時代にやったことが役立っていると感じることはありますか。
佐々木 高校時代にはサッカー部に入っており、ここで自ずと今につながるような上下関係を意識したコミュニケーションの基礎力が築けたように感じています。そのほか、アルバイトでお弁当屋さんに勤めていた時も、周囲は目上の方ばかりだったのでこれも大きな経験になりました。
また、工業高校だったということもあり、CADなどをある程度学ぶことができたほか、先日コンクリートを取り扱った時に「あ、学校で似たような授業を受けたな」とふと思い出しました。それと同時に「もう少し真面目に聞いておけばよかったー!」とも思いましたけど(笑)。
——渡邊さんから見て、学歴や文系理系で有利不利を感じることはありますか。
渡邊 最初の2年程度はやはり実務経験を積むスタートが違うため、同じ実年齢で比べるとやはり差を感じるシーンがところどころに感じられますが、それもいつまでも埋まらない差かというとそんなことはなく、5年も経てばその差はほぼなくなると思っています。
また、工業系、理系の出身の方は実務に直結する知識の基礎があるほか、業務に必要な資格などを取得する際に有利なこともあります。
ただ一方で、文系出身の社員も7割おりますし、高卒大卒の差同様にそこまで大きな差があるかというと、あまりないというのが実感ですね。
施工管理業務のやりがいや今後のことを教えてください
——この仕事のやりがいと今後の目標は何ですか。
佐々木 やはり橋りょうなど、大きなモノに携わる仕事で、多くの時間と人が関わる、そんな仕事だと感じています。そんな中、竣工を迎え、きれいに塗装が塗り変わったのを目の当たりするとやりがいを感じます。
入社して年数も経って来たので、これからは取ることができる資格や、取らなければならない資格なども増えてきます。まずは鉄道工事に必ず必要な「線路閉鎖責任者*」という資格を取らなければと思っています。鉄道の工事現場には必ず必要な人員、資格なので、私の業務では必須の資格とも言えるのでぜひ取りたいです。
そのほか、現在では上司などに協力してもらいながら行っている施工管理業務ですが、1人の力だけで、着工から竣工までをやりきってみたいです。
渡邊 私はみんながなりたい、と思ってもらえるような上司になるのが目標です。そう思ってもらえるように、しっかりと若手を引っ張っていきたいですね。
佐々木さんは、小さな工事であれば着工から竣工までをやりきれる力はあります。彼のように入社後、仕事に熱心に取り組んでくれれば数年の経験でも、どんどん大きな仕事にチャレンジしていけますし、そのチャレンジを支えてくれるたくさんの先輩がいる、そんな社風があるかなと感じています。
現在も弊社としてはかなり大きな道路橋の工事を進行しているのですが、施工箇所に鉄道が敷設されているため、列車運行に支障がないように工事を進めなければなりません。こうした工事箇所では鉄道工事を多く手掛けてきた、弊社独自のノウハウがかなり活きてくる現場ともいえます。
例えば足場を吊るロープは、金属チェーンを使うことも多いのですが、弊社では鉄道の現場ということで感電事故や、レールに流れている信号制御用電流の短絡防止の観点から絶縁性と強度の両面に優れたポリアリレート繊維の「絶縁吊りロープ」を使用するほか、足場も軽くて丈夫、そして絶縁性のあるFRP足場材「コンポーズパイプ」を使用しています。
弊社がメーカーと共同開発して販売している「絶縁吊りロープ」や「コンポーズパイプ」は、おかげさまでたくさんの企業にご利用いただいています。
就活中の方へのアドバイスをお願いします
渡邊 学生時代には基本的な「人間力」を伸ばしていくことが大切だと感じています。業務に関わる専門的な知識や技術は、入社後いくらでも学ぶ時間がありますので大丈夫です。私自身就職活動では志望した会社に落ちてしまった経験も少なくないのですが、落ちたからこそ見える、次の自分像があったように感じます。ぜひ悔いなくやりきって欲しいなと思っています。
佐々木 いわゆる「報連相」を就活の頃からしっかりやることを心がけ、クセにしておくと良いと思います。分からないことはそのままにせず、上司や先輩にも臆することなく、質問をして、自分から話していくことが大切です。夜勤もあるので体力はあったほうが良いですね。
あとはコミュニケーション能力が高いと業務を進める上では役立つかもしれません。社内の雰囲気は、面白い方が多いですね。チームで業務を進めていくからか、お互い仲が良い、そんな印象です。
渡邊 橋が好きな方や、元気が有り余っている方などはぜひ弊社へお越しいただきたいなと思っています(笑)。
——本日はありがとうございました。
今回紹介させていただいた会社
建設塗装工業株式会社
1939(昭和14)年に創業し、80年以上鉄道分野を中心とした社会インフラのメンテナンス事業に携わっている会社です。特に、鉄道橋りょうのメンテナンスに強く、豊富な経験と高い技術力で交通インフラを次世代へ引き継ぐことを使命としています。また、記事中にも出てきた「絶縁吊りロープ」やFRP足場材「コンポーズパイプ」を共同開発するなど、新技術の導入・開発にも積極的に取り組んでいる会社です。
建設塗装工業株式会社のホームページはこちら
2023年11月取材
聞き取り・撮影 村上悠太
企画・構成 交通新聞社
※記事中の情報は、この記事を公開した当時のものです。
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