【JR貨物 鉄道車両メンテナンス業務を支えるシステムの共同展開を発表 ほか】就活生が気になる鉄道業界プレスリリースまとめ・2024年3月
いよいよ3月、大卒のエントリーが始まり、非常に慌ただしい時期ですね。
鉄道就活応援隊のX(旧Twitter)では、鉄道業界各社のプレスリリースから就活生向けの話題をピックアップして、不定期にお届けしていますが、今回の記事では、2024年3月に鉄道業界の事業者から出されたプレスリリースをピックアップ。140字の制限があるX(旧Twitter)では伝えきれなかった事象も加えながらお届けします。
プレスリリースを読むのは単なる情報収集だけではなく
・企業がどういった考えで施策を打っているのか
・自分の目指すことと、その企業の考えに重なるところがあるか
といったことを探るのにも有効です。ぜひお役立てください!
なお、見出しの日付はプレスリリースの発表日ベースです。
それではどうぞ!
3月11日 富士通・JR貨物 鉄道車両のメンテナンス業務を支える「車両管理システム」の共同展開を発表
【こんな人向け】鉄道車両に関わる仕事に興味のある人
【解説】鉄道車両のメンテナンス現場が抱える課題と、その解決策の水平展開
鉄道車両は、非常に多くの部品から構成されています。それらの状態を把握し、メンテナンスを計画、実施、記録するという一連の業務には、多くの人的リソースを必要としてきました。
その効率化とヒューマンエラー発生の低減などのため、JR貨物は富士通と共同で「車両管理システム」を開発し、従来紙ベースで行われてきた検査修繕情報を電子化し、検査情報の一元管理も実現しました。
導入によってさまざまな効果を実感したJR貨物が、鉄道車両のメンテナンスにおける効率化を業界共通の課題と捉え、これを解決するソリューションとして「車両管理システム」を富士通と共同して他社に展開することにした、というわけです。
鉄道就活応援隊でもたびたび紹介していますが、近年、鉄道のメンテナンスにおいてはデジタルを活用した様々な効率化や安全性の向上が図られていることをぜひ意識していただければと思います。
3月13日 地方鉄道向け無線式列車制御システム技術評価検討会が中間とりまとめを発表
【こんな人向け】信号通信分野を専攻している人、関心のある人
【解説】地上設備の保守点検の省力化
鉄道において、安全を守るための基本的な仕組みが閉塞(閉そく)です。線路を一定の区間に区切り、ひとつの区間にひとつの列車しか入れないようにすることで、列車どうしが衝突しないようにする仕組みを閉そく方式と言います。
この閉そく方式の歴史は古く、技術の進歩とともに発展してきました。現代においては、駅や信号機などによって閉塞を区切り、列車の位置は軌道回路を利用して検知するのが一般的です。
なお、軌道回路については、鉄道信号大手の日本信号がWebサイトに記載している説明が大変分かりやすいです。
この方式は長い歴史があり信頼性が高いものの、多くの地上設備が必要になり、その維持に人手やコストを要したり、列車の運転間隔を変えるために閉そくの長さを変えようとすると地上設備も合わせて移動させなければならなかったりと、複数の課題がありました。
特に、維持にかかる人手やコストは、経営規模の小さい地方鉄道にとっては大きな負担です。
これらの課題を解決し、また高度な列車制御を実現することで遅延回復にも効果のある方式として注目されているのが、無線式列車制御システムです。
この検討会では、地方鉄道の実情に合った無線式列車制御システムを開発し、安全性の検証などを通じて導入を促進することで、地上設備の保守点検の省力化を実現することを目的としています。
その過程では伊豆箱根鉄道大雄山線で現車試験を実施するなど、着実に検証を進めており、今回の中間取りまとめでは検討状況やこれまでの成果について報告しています。
なお無線式列車制御システムはJR東日本で既に「ATACS」の名称で実用化されています。「ATACS」では
列車の在線位置を車軸の回転数や地上無線機との交信によって割り出す
その在線位置を無線によって拠点装置に送信
先行列車の位置から、列車が走行できる末端位置(停止限界)を割り出し、現在位置からその地点までの速度照査パターンを作成
列車は3.で作成した速度照査パターンの範囲内を走行し、もし超過した場合は車上制御装置がブレーキを作動させて停止限界より手前に列車を停止させる
といった仕組みになっていますが、この検討会で開発した無線式列車制御システムでは、駅間での在線位置検知を省略するなどの工夫によって、地方鉄道の実情に合った規模のシステムを実現しています。
この今後どこまで普及するかは未知数ですが、地方鉄道の維持にあたっては必要不可欠となってくる、施設の維持管理における省力化を実現する手段として今後も注目です。
3月25日 東京メトロ 丸ノ内線・南北線の両線においてCO2排出量ゼロでの運行を実現することを発表
【こんな人向け】鉄道におけるカーボンニュートラルに関心のある人
【解説】再生可能エネルギーの導入
もともと鉄道は環境にやさしい乗り物として注目されてきましたが、その理由としてあげられるのはエネルギー効率の高さでした。
近年では、動力として使用される電力の発電方法にまで踏み込んでカーボンニュートラルを実現しようという動きが活発に見られるようになり、鉄道の環境優位性が改めて注目されるようになっています。
丸ノ内線・南北線に再生可能エネルギーを導入することなどによって、東京メトロは年間約61,400トンにものぼる二酸化炭素排出量削減を見込んでいるとのことです。
なお他社の例では、JR西日本が大阪環状線・JRゆめ咲線で列車の運転に用いられる電力を100%再生可能エネルギー由来電力としています。
そのほか押さえておきたい国内での事例などについては、関連記事もご覧ください!
【関連記事】
3月26日 西武鉄道・JR東日本 ホームの状況をモニターし車両に近づく乗客を検知するシステムについての技術協力を発表
【こんな人向け】安全対策に関心のある人
【解説】コスト削減への取り組み:ワンマン運転の拡大
車掌の乗務を不要にするワンマン運転は列車の運行コスト削減につながるため、適用線区は年々拡大される傾向にあります。
一方で、従来よく用いられてきたミラー越しに運転士が目視する方法では、長編成の列車の乗務時にはホーム上の安全確認が難しいという課題がありました。
その課題を解決するために、車体側面にカメラを設置し、その映像を運転席のモニターに投影することでホーム上の安全確認を容易にする対策が取られてきました。
今回取り上げた両社の取り組みは別々の動きですが、共通点は、車載カメラで撮影した映像をAIに学習させることで、列車の運行に支障しそうな人の動きの検知することなどを目的とした実証実験を営業列車で行うことです。
鉄道事業者が安全確保と両立させながらワンマン運転の拡大を目指す意図と、その事実を押さえておきましょう。
【関連記事】
2023年5月にJR東海・JR西日本がそれぞれ車体側面に設置したカメラによる画像認識技術の検証について発表した際の解説が載っています。
終わりに・関連リンク
3月のプレスリリースまとめは以上になります。
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前回(2月)のプレスリリースまとめはこちら
JR四国が発表したハイブリッド式車両導入についてや、JR東海が発表した新たな荷物輸送サービス「東海道マッハ便」などについて取りあげています。
3月の鉄道就活応援隊記事一覧はこちら
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