【ブルーリボン賞発表や江ノ電の1日限定タッチ決済乗車無料施策など】鉄道業界 就活生が気になるプレスリリースまとめ【2023年5月】
鉄道就活応援隊のTwitterでは、鉄道業界各社のプレスリリースから就活生向けの話題をピックアップして、不定期にお届けしています。
プレスリリースを読むのは単なる情報収集だけではなく
・企業がどういった考えで施策を打っているのか
・自分の目指すことと、その企業の考えに重なるところがあるか
といったことを探るのにも有効です。
今回の記事では、そんなプレスリリースについてのツイートから2023年5月の1ヶ月間をピックアップ。140字の制限があるTwitterでは伝えきれなかった事象も加えながらお届けします。
なお、日付はプレスリリースの発表日ではなく、鉄道就活応援隊でツイートした日ベースですのでご注意ください。それではどうぞ!
5月9日 JR東日本・JR西日本 新幹線の自動運転で技術協力の覚書を締結したことを発表
【就活生の目線】新幹線における自動運転の実現
JR東日本は従前から新幹線における自動運転の検討を進めています。
2021年度には上越新幹線の営業列車が走らない区間で自動運転の実証試験を行いました。2020年代末にはその回送列車でGoA4相当、2030年代中頃には上越新幹線の営業列車でGoA3相当となるドライバレス運転の実現を目指します。
JR西日本においても同様に自動運転の検討が進められており、2022 年度からは北陸新幹線の白山総合車両所敷地内において、自動運転の実現に必要な機能の評価や課題抽出を行うための実証試験を実施しています。
北陸新幹線で直通運転を行う両社の協力で、新幹線における自動運転の実現に向け一層弾みがつくことが期待されます。
【関連記事】鉄道における自動運転の現状と課題、これからについて
GoAとは何か、など鉄道における自動運転の基礎知識、そして就活生のみなさんが気になる「どのような企業・技術が関わっているか」についての解説はこちらの記事をご覧ください!
5月10日 JR東日本 ロッカーの多機能化などによる駅の物流拠点化に向けた取り組みを発表
【就活生の目線】駅をヒトだけでなくモノの拠点に
従来は荷物の預入がほとんど唯一の機能であったロッカー。
新たに導入されるロッカーを配送プラットフォームシステムによって物流事業者やECサイトなどと結びつけることにより、商品の受け取りや荷物の発送など様々な新しいサービスの提供を可能にすることを狙っています。
物流業界でも課題となっている再配達の減少などに貢献し、鉄道就活応援隊でもたびたび触れている「2024年問題」で直面を迫られているドライバー不足への対応を実現できるポテンシャルがある施策です。
ロッカーの多機能化=駅の多機能化でもあり、とても注目ですね。
5月11日 JR九州 2023年3月期決算を公開
【就活生の目線】2期連続の黒字・増益を達成
コロナ禍の最悪の状況は脱し、鉄道利用を含め需要が引き続き回復傾向にある中で、多くのセグメントで増収を達成、連結決算は増収増益となりました。
なおJR九州の業績・事業構造については、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
5月12日 江ノ島電鉄 タッチ決済限定の乗車無料キャンペーン実施を発表(終了済み)
【就活生の目線】鉄道におけるクレジットカードタッチ決済の普及
江ノ島電鉄は、5月15日にクレジットカードタッチ決済の場合に限り運賃を実質無料にするキャンペーンを実施しました。
国内では交通系ICカードの普及が先行していますが、海外ではクレジットカードのタッチ決済が広がりを見せ、国内においてもインバウンド対応や顧客データ活用、そして導入コストが低い、といった理由からクレジットカード決済の導入が徐々に広がりを見せている点に注目です。
なお実証実験を含め、首都圏の鉄道会社で全線にクレジットカードタッチ決済を導入しているのは江ノ島電鉄が唯一です(2023年5月31日現在)。
5月16日 JR東日本ほか 「はこビュン」とキッチンカーを活用した産直品の販売実証実験を発表
【就活生の目線】貨客混載と地方創生の関わり
鉄道輸送については、環境にやさしい面だけではなく、今までは実現できなかった「地方の高鮮度産直品を都心で販売する」といった取り組みを可能にする「地方創生に貢献できるポテンシャル」があることを押さえておきたいところです。
【関連記事】はこビュンほか鉄道における貨客混載の解説記事はこちら
5月18日 京成電鉄 鉄道駅バリアフリー料金制度の利用を目指すことを発表
【就活生の目線】
鉄道のバリアフリー化については従前より行政の支援があり、導入に必要な費用の一部に補助金が支出されたり、整備した設備(資産として扱われます)に対する固定資産税などが減免されたりといった支援策が講じられてきました。
そのような状況下で、鉄道駅のバリアフリー化を更に加速させるための制度として導入されたのが、鉄道駅バリアフリー料金制度です。
都市部において薄く広く利用者に負担を求めることで、整備に多大な費用を要するバリアフリー設備を鉄道事業者が導入しやすくすることが狙いです。
鉄道のバリアフリー化の進展、関わる企業や技術などについてまとめた記事は以下のリンクからどうぞ!
【関連記事】鉄道におけるバリアフリー化の進展と今後
5月19日 JR東海 営業列車での車体側面カメラ画像認識技術の検証を発表/JR西日本 車両側面カメラを用いた画像解析装置の開発・検証開始
【就活生の目線】コスト削減への取り組み:ワンマン運転の拡大
車掌の乗務を不要にするワンマン運転は列車の運行コスト削減につながるため、適用線区は年々拡大される傾向にあります。
一方で、従来よく用いられてきたミラー越しに運転士が目視する方法では、長編成の列車の乗務時にはホーム上の安全確認が難しいという課題がありました。
その課題を解決するために、車体側面にカメラを設置し、その映像を運転席のモニターに投影することでホーム上の安全確認を容易にする対策が取られてきました。
今回取り上げた両社の取り組みは別々の動きですが、共通点は、車載カメラで撮影した映像をAIに学習させることで、列車の運行に支障しそうな人の動きの検知することなどを目的とした実証実験を営業列車で行うことです。
鉄道事業者が安全確保と両立させながらワンマン運転の拡大を目指す意図と、その事実を押さえておきましょう。
5月24日 JR西日本光ネットワーク アルテリアとの業務提携契約を締結・販売協力開始を発表
【就活生の目線】既存アセットの活用
JR西日本が2021年7月に設立したJR西日本光ネットワーク(JRWON)では、JR西日本が保有する山陽新幹線および西日本エリアの在来線の沿線に整備された光ファイバー芯線の貸し出しを行ってきました。
インターネット技術の進展によりデータ流通量が増え光ファイバー網の需要は高まる一方という状況にあって、鉄道沿線に敷設された光ファイバーは直進性による低遅延や災害への強さといった点で優れています。
JR東日本でも似た動きはあり、同様の動きは今後も拡大が進むと思われます(JR東日本「東日本の各地域と東京大手町エリアが高品質な光ファイバネットワークでつながります!」(2023年3月29日))。
5月25日 鉄道友の会 2023年のブルーリボン賞・ローレル賞を発表
【就活生の目線】
ブルーリボン賞・ローレル賞は、前年に新しく営業運転を開始した鉄道車両の中から鉄道友の会によって選ばれた車両に対して与えられる賞です。
ブルーリボン賞は、鉄道友の会の「ブルーリボン賞・ローレル賞選考委員会」がノミネートした車両に対する会員の投票結果に基づき、選考委員会が最も優秀であると認めた車両へ贈られます。
ローレル賞は、投票結果を参考にした上で選考委員会が審議し、優秀と認めた車両に贈られます。
2023年のブルーリボン賞はJR東海のHC85系、ローレル賞は京都市交通局の20系に決定しました。
HC85系は日本初の特急向けハイブリッド車両であり、技術・サービスの両面で新たな挑戦を実現できたことなどが評価され、会員投票で最多得票であったそうです。
なおHC85系の製造は、JR東海のグループ会社である日本車輌製造株式会社(日本車両)が、20系の製造は近鉄グループの近畿車輛株式会社(近畿車輌)が担っています。
鉄道車両は発注者である鉄道会社だけで出来上がるものではないわけですから、車両メーカーなどの関係会社にも注目したいところです。
【関連記事】HC85系の開発・製造に携わった方へのインタビュー記事
ブルーリボン賞を受賞したHC85系の車体に備わった特徴的な「ある構造」の開発などについて、日本車両の松井さんにインタビューした記事はこちらです。
終わりに
5月のプレスリリースまとめは以上になります。
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前回(4月)のまとめはこちら
JR貨物が貨物船を共同発注することになったニュースや、JR東日本が示す新たな「Suica」像について取りあげています。
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