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第8回鉄道技術展レポート・次回参加のススメ【学生の方の参加方法も紹介】

11月8~10日の3日間開催され、大盛況のうちに幕を閉じた鉄道技術展。
業界の情報収集をする機会として、編集部のメンバーも、来場者登録をして参加してきました。今回はそのレポートをお届けするとともに、業界向けの見本市である鉄道技術展は、実は就活生のみなさんにも有用な場である、ということについてご紹介します。それではどうぞ!


【1分でわかる】鉄道技術展とは

産経新聞社が主催する、鉄道に関わる技術分野を広く横断的に扱った見本市です。かんたんに言うと、鉄道事業者の社員と、その鉄道事業者に自社の技術や製品、サービスを売り込みたい国内外の企業の社員が、直接顔を合わせて商談や情報交換をする場所です。

2010年から幕張メッセで開催されており、第8回の今回は2023年11月8日から10日にかけての3日間開催されました。なお、昨年には初めて大阪での開催もありました。

出展者が扱う分野は施設、電気、通信、車両、運行管理、旅客サービスなど幅広いで。公式Webサイト内の出展者一覧のページを見ればわかる通り、業種も車両メーカー、部品のメーカー、資材メーカー、土木・建築の施工会社、商社、コンサルタント、機材レンタル業者など多岐にわたります。

また鉄道技術の関係者が多く集まることから、業界関係者のセミナーも併せて開催され、その多くは予約で埋まって当日までに満席になります。

国内企業でなく、国土交通省や海外企業からも登壇者が出ます。 出典:鉄道技術展 | 併催事業

このように、鉄道技術展は鉄道業界の関係者が一堂に会する国内最大規模の催しであるのです。

参加レポート

さて前置きが長くなりましたが、ここからが参加レポートです。

会場の様子と出展者

会場である幕張メッセに編集部が到着したのは、初日の開場から間もなくでした。既に多くの来場客がいましたが、事前登録を済ませていたのでスムーズに入場できました。

ホールに入ってすぐに感じたのは、参加している企業・団体の多さ
広い館内には所狭しと出展企業のブースが並んでいます。交通新聞の記事によれば、コロナ禍の前回(2021年)の開催と比べて参加社・団体が大幅に増え、2019年とほぼ同じ規模の533社・団体までに回復したとのこと。
国内企業が大半ですが、線路のゆがみを直すレール削正車で有名なスペノインターナショナルなど海外の出展企業もあります。

鉄道ゲンバ最前線で取材させていただいた中からも、小田急エンジニアリング、交通建設、総合車両製作所、東鉄工業、日本車輌製造(日本車両)、といった企業も出展していました。

すれ違う人の胸元に見える参加証をちらっと見ていると、ほとんどが鉄道事業者や出展者でした。やはり鉄道業界の特徴としてスーツが多く、それ以外では企業のロゴが入ったジャージを羽織った姿が圧倒的に多いです。
学生の方と思しき若い私服姿のグループも少数ですが見られました(なので学生のみなさんが次回参加するときもご安心ください)。

所要時間

各出展者のブースで説明を受けたり、映像や実演を見たりしながら回ると、会場を回るのには丸一日を要しました。
途中で1時間余りのセミナーや昼食の時間を入れてはいますが、初めて参加する場合は10時の開場直後から、遅くとも午後の早い時間から参加することをお勧めします。あっという間に時間が経ちます。

もし疲れたら休憩所で休むか、地方の鉄道事業者が各鉄道の課題を提示しつつ、グッズなどを売る「地方鉄道応援プロジェクト」のコーナーもあるので、そちらで気分転換を図るのがおすすめです。

見て回って気付いたこと

各社の展示を見て回ると、ある程度共通するテーマがあることに気付きます。
たとえば線路や橋梁、トンネルといった鉄道施設系の企業の展示では、AIを活用した画像認識技術を活用した提案が目立ちました。

補修の要否を判断するにあたって画像認識技術を活用することにより、安全を確保しながら人による巡回検査の回数を減らしたり、CBMを実現したりするものです。
今後、さらに活用が進むと思われるAIについてはみなさんも要注目ですよ!

なお、それ以外にも鉄道施設系の企業の展示では、

  • 曲線かつ築堤の上に敷設されている線路の脇にプラットホームを新たに設置する際、正確かつ簡便な設置を実現する新たな工法

  • 保線作業を効率化するために、バックホーに接続するアタッチメントを新たに開発

  • 保線作業で線路上を移動する際に使用する小型の軽量・電動カートを新たに開発→軽量なので作業用車両への積み下ろし時に作業員への負担が小さい

といったような例がありました。基本的には「従来は難しかったことを実現する新たな工法」「機械化などによる作業の省力化・作業員の負担軽減」という2つの軸が中心となっている、というのがポイントであると感じました。

車両メーカーに目を向けると、総合車両製作所ではステンレス製車両のブランド「sustina」の紹介があり、日本車両では車両技術ブランド「N-QUALIS」の紹介がありました。商品開発に加えてブランディングにも力を入れている様子が見て取れます。

また、展示の仕方からはメーカーそれぞれの違いがよくわかります。たとえば、以下の通りです。

  • 「sustina」ブランドを展示の中心に据えてアピールしていた総合車両製作所→ステンレス製車両に注力している

  • アルミニウム合金・ステンレス鋼・耐候性鋼の3つの素材について違いを展示している近畿車輛→様々な素材で車両を製造している

みなさんが合同説明会で各社の展示を見て回ったり説明を聞いたりする際にも、こういった業界のトレンドや各社ごとの差異を掴むことを意識すると、より理解が深まりやすいだろうな、というのは多くの展示を見て回って感じたことでした。

ここからは、たくさんの展示の中から編集部がみなさんにご紹介したいものをピックアップします。分量の都合で、絞りに絞って二つだけですが、どうぞ!

展示ピックアップ① 企業の枠を超えた協力

1つ目の例は、「事業者・部門の垣根を超えた各種設備の統合管理を実現するプラットフォーム」についての展示です。

展示主体である鉄道オープンイノベーション協議会は、小田急エンジニアリング 、東急テクノシステム 、阪神ケーブルエンジニアリング 、名鉄EIエンジニア、いずれも大手私鉄のグループ会社である4社から構成されています。事務局も、阪急阪神グループのアイテック阪急阪神です。

この鉄道オープンイノベーション協議会が提唱する「鉄道総合モニタリングプラットフォーム」の活用は、従来は鉄道事業者やその部門、協力会社で個別に行われていた各種設備の管理を、各社共通のプラットフォームで行う取り組みです。

さまざまな設備の監視や制御を、設備・センサーのメーカーを問わずに一元化して行えるようになることで、異常発生前後の対応が迅速化され、外部システムとの連携によって故障の前兆をとらえた保全に活用できます。

また、会社横断で使用することによってスケールメリットが発揮され、各社がバラバラに開発・保守・運用してきた設備の管理システムへのコストを削減できるほか、会社を跨いだノウハウの共有ができるといったメリットもあります。

西武鉄道の決算短信について紹介する記事で紹介したように、複数の鉄道事業者が技術面で協力している事例は既に複数あります。
「鉄道総合モニタリングプラットフォーム」はまだ検討段階ですが、鉄道メンテナンスにおいても同様の動きが今後広がるはずです。
そのような動きを象徴するものとして、ピックアップの1つ目としてご紹介しました。

展示ピックアップ② 多機能鉄道重機のデモ

2つ目のピックアップは、JR西日本と日本信号、人機一体が共同開発する鉄道作業用の工事重機の、多機能鉄道重機です。

鉄道のメンテナンスにおいては、架線や跨線橋に関わる作業や沿線樹木の伐採など、高所作業が必要な場面が多くあります。
多機能鉄道重機にはそのような様々な作業で必要な作業員の数を減らしたり、安全性を向上させたりといった効果が期待され、現在実用化に向けた研究が進められています。

今回はその試作機体の動作デモが屋外で行われるということで、見学してきました。

手前がVRゴーグルを装着した操縦者。奥に見えるのが、トラックに積載された重機の本体。

デモは2つのパートに分かれており、前半は樹木伐採を想定した動作です。
枝に見立てた黄色いバーに、実際に切断はしなかったもののチェーンソーを当てるところまでを実演しました。チェーンソーは電気的にも多機能鉄道重機のアームと接続されているようで、オペレーターが操作できるようになっている、とのことでした。

角度の関係で見えづらいですが、左側のアームの先に取り付けられたチェーンソーを、黄色いバーにあてがっています。

後半は、ボルトの締め付けを想定した動作です。左側のアームのアタッチメントを電動ドライバーに交換し、右側のアームで黄色いバーが邪魔にならないように押さえながら、ボルトをスムーズに締め付けました。

流れるような動作でボルト(写真左側)を締めていく多機能鉄道重機。

人型の上半身をした巨大なロボットが工事に投入される、というのはなんだか未来の光景を見ているようですが、操縦者が感覚的に操作できるにはこの2本腕の構造である方が好都合であるそうです。

動画で見たいという方は、日本信号の公式X(旧Twitter)アカウントの投稿からご覧ください!(Twitterにログインしないと見られません)

就活生のみなさんも参加するべき理由とは。参加方法もあわせてご紹介

参加するべき理由と参加方法

ここまで述べた内容でも分かるように、鉄道技術展は基本的に「業界関係者向け」の場です。ですが、一般の方も事前登録をすれば無料で入場できます。

Q.来場には料金がかかりますか?
A.展示会は有料です(1名 2,000円)。ただし、インターネットから事前登録をしていただくことにより入場料はかかりません。

鉄道技術展 | よくある質問(Q&A)より。太字は編集部によるもの

つまり、このサイトを見ている学生のみなさんでも「どんな企業があるのか」「どんな技術が用いられているのか」といった就活に向けた情報収集の場として活用することができるのです。
出展者の一部企業が採用募集情報を掲示する「リクルートコーナー」も設けられているので、気になった企業の採用情報をすぐにチェックすることも可能です。

また、業界のトレンドや各社の違いを把握するのにもうってつけの場ですのですし、鉄道に関わるサービス・製品はとにかく幅広いので、なんとなく見て回るだけでも多くの発見があるはずです。

普段何気なく利用している駅を清掃するサービス、普段目にしている駅の発車標や、座席のシート、自動券売機、信号機、踏切の警報器といった製品、それぞれに様々な企業がかかわっています。

その中には、あなたが今まで知らなかった、自身の専攻や興味と一致する企業もあるかもしれません。
なので、まずは軽い気持ちで参加してみてもいいと思いますよ!

参加する場合は、公式Webサイトから登録フォームに進み、メールアドレスや氏名などの個人情報を入力して5分もあれば事前登録が完了します。
当日は、参加用のQRコードが印刷された参加証を印刷して持参すればOKです(もし持参を忘れた場合でも対応は可能ですが手間が増えます)。

参加する上での注意

鉄道関係の仕事に就職したいみなさんでも気軽に入場できる鉄道技術展ではありますが、メインはあくまで商談の場であるのを忘れないことが大切です。出展者に質問をする場合も、自身は顧客である鉄道事業者ではないことを理解した上で、商談の邪魔にならないよう手短に済ませるような配慮が必要です。

また、館内は基本的に撮影禁止であるため、展示されているものが気になって撮影したくなったり、SNSへ投稿をしたくなったりした場合は、必ず出展者に確認を取ってその指示に従いましょう。

なお以上の内容は、鉄道技術展2023についてのものです。次回開催の場合は参加要件などが変更になる可能性もありますので、必ずご自身で確認してください。

次回の開催予定

次回開催については、この記事の執筆時点で、

2025年11月:幕張メッセ
2026年:インテックス大阪

と発表されています。
今後の詳細が気になる方は公式Webサイトをチェックしましょう。

おわりに

どのような企業があるのか、その企業にはどのような強みがあるのか、どのような技術が求められているのか、どのような社員がいるのか――そういった生の情報を集めるにあたって、鉄道技術展は就活生のみなさんにとっても重要な場所です。

幕張メッセでの次回開催は2年後ですが、その時期に就活を迎えているであろう26卒の方がいたら、ぜひとも今から参加を検討してもらいたいです。

「終了した今になって言われても……」と思った現3年生の方は、申し訳ございません。
今回の「鉄道技術展」のようなタイムリーな情報を入手したい方は、ぜひともX(旧Twitter)アカウントをフォローしてくださればと思います。

また、鉄道技術展での展示についてWebサイトで公開している企業もあります。
例として、交通建設のWebサイトをご紹介します。鉄道技術展の出展者一覧の中で気になる企業があれば、「企業名+鉄道技術展」で検索するとこういったページにもたどり着けるでしょう。
ぜひ試してみてください!

そのほか、東邦電機工業のように、X(旧Twitter)で紹介している企業もあります。

最後になりますが、世界に目を向けると、国際的な鉄道見本市として有名なInno Trans(イノトランス)があります。2年に1回ベルリンで開催され、前回の2022年9月開催では56カ国から2,834 社が参加したとのこと。

JETRO(日本貿易振興機構)の記事によると、日本からも東京メトロや日本信号、近畿車輛など、計23社が出展しています。この記事を読んでいるあなたも、その進路によっては参加する機会があるかもしれません。


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