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【赤福餅、アーバンライナーに乗る など】鉄道業界 就活生が気になるプレスリリースまとめ【2023年6月】

鉄道就活応援隊のTwitterでは、鉄道業界各社のプレスリリースから就活生向けの話題をピックアップして、不定期にお届けしています。

プレスリリースを読むのは単なる情報収集だけではなく

・企業がどういった考えで施策を打っているのか
・自分の目指すことと、その企業の考えに重なるところがあるか

といったことを探るのにも有効です。

今回の記事では、そんなプレスリリースについてのツイートから2023年6月の1ヶ月間をピックアップ。140字の制限があるTwitterでは伝えきれなかった事象も加えながらお届けします。

なお、日付はプレスリリースの発表日ではなく、鉄道就活応援隊でツイートした日ベースですのでご注意ください。それではどうぞ!


6月5日 JR東日本 常磐線の特急列車で茨城県のご当地パンやメロンを首都圏へ輸送・販売することを発表

【こんな人向け】物流業界の課題に興味がある人・地方創生に興味がある人
【解決】貨客混載
JR東日本は「はこビュン」のサービス名で、様々な物品を旅客列車に積む貨客混載を実施してきました。
今回発表があったケースのように比較的単価が高く、鮮度を保つために速達性が必要とされる物品は貨客混載に向いていると言えそうです。

【関連記事】鉄道における貨客混載の現状と課題、これからについて

貨客混載とは何か、といった基礎知識、事例についての解説はこちらの記事をご覧ください!

6月8日 JR東海 在来線乗務員用タブレット端末「CAST」の機能向上を発表

【こんな人向け】輸送関係に興味がある人・鉄道のDXに興味がある人
【解説】輸送障害への対応の迅速化・業務の効率化
 CAST(Crew Assistance System Tokai)はJR東海が2018年3月に導入した、タブレット端末に組み込まれた運転士の操縦支援システムです。GPSの位置情報を活用し、停車駅や徐行区間が近づくと停止位置や徐行速度などを表示することで運転支援を実現しています。

現在、運転士が列車に乗務する際には、運転に必要な情報が記載された紙製の列車運転時刻表とCASTを併用して運転していますが、新しいCASTでは運転に必要な情報がCASTで一元的に把握できるようになります。
これにより、従来は紙や口頭ベースで行われていた変更の伝達や輸送障害への対応が効率化・迅速化されると期待されています。

なお類似の仕組みにはJR東日本の導入している「DTAC」があります。DTACの導入に関わったNTTテクノクロスのWebサイトには、導入の経緯やシステムの概要について解説したページがありますので、鉄道のDXに興味がある人はぜひご覧ください。

6月9日 JR東日本 長野支社ほか 企業連携による農業労働力確保・地域交流人口拡大に向けた実証実験を開始

【こんな人向け】地方創生と鉄道のかかわりに関心がある人
【解説】地域と鉄道事業者との連携
この実証実験では、JA長野県農業労働力支援センター、JR東日本、KDDI 、及び中部電力が連携。
自治体が農業について抱える「担い手不足」という課題と、副業解禁やテレワークの導入により社員の副業先を探す企業が抱える「受⼊先開拓や、労務管理等 の社内諸⼿続き」といった課題を解決することを目指し、1日農業バイトアプリ「daywork」に法人向け機能を追加するというものです。

なお、ほぼ同じタイミングでJR東日本東北本部からは山形県(⼭形県農業労働⼒確保対策実施協議会)、NTT東日本、東北電力と連携した同様の実証実験の開始がリリースされています。
JR東日本・NTT東日本・山形県-企業⼈による農業労働⼒確保と地域交流⼈⼝拡⼤を 目指した実証実験のお知らせ(6月9日)

6月13日 南海電鉄 自動運転走行試験の実施を発表

【こんな人向け】鉄道における自動運転の推進に関心がある人
【解説】一般線区におけるGoA2.5レベルの自動運転実現に向けた課題
今回の実証実験は、将来的なGoA2.5レベルの自動運転実現に向けた、自動運転システムの安全性や安定性の確認、自動運転時の係員操作についての課題抽出が目的とされています。
協業する京三製作所は鉄道信号の大手でもあります。JR九州などと協業している日本信号同様に、鉄道の分野では信号関係のメーカーが自動運転の分野をリードしている、ということは企業選びのヒントになるのではないでしょうか!

【関連記事】鉄道の自動運転について

6月14日 日本線路技術ほか 鉄道メンテナンスの共通プラットフォームを構築することを発表

【こんな人向け】鉄道メンテナンスのDXに関心がある人
【解説】CBMとは? その実現に必要なこと
CBMは、状態基準保全と訳され、メンテナンスの手法の一つです。

従来の鉄道メンテナンスは、使用期間や使用回数が一定に達した場合にメンテナンスする「TBM(時間基準保全)」が中心でしたが、

  • 機器や設備の状態を監視するセンシング技術

  • 取得したデータを遠隔地の施設・機器に送信するための通信技術

  • 取得したデータを処理し、機器や設備の状態を定量的に判定したり、適切な保全時期を予測したりするデータ処理技術

これらの技術の進歩により、機器や設備の状態をリアルタイムに監視し、必要に応じてメンテナンスするCBMの導入が可能になりました。

日本線路技術の開発した「RAMos+」においては、営業列車に搭載された線路設備モニタリング装置が取得したデータを処理するためのプラットフォームであり、鉄道事業者各社が同じプラットフォームを利用することで、開発費の削減が期待できます。

また、鉄道事業者4社が結成する「線路設備モニタリングコンソーシアム」においては「RAMos+」の運用状況について情報共有がなされるほか、蓄積されたデータを学習データとして活用するなど、AI技術の開発・精度向上を含めたメンテナンスの技術発展が期待されています。

6月15日 JR東海 EXサービスの新サービスを発表

【こんな人向け】鉄道におけるネット予約の推進に関心がある人
【解説】鉄道事業者がなぜオンライン予約・チケットレス乗車を推進するか
東海道新幹線のネット予約&チケットレス乗車サービスであるEXサービスは、2001年9月にサービスを開始しました。
当初は東京~新大阪に限られていた対象区間は徐々に拡大し現在は東京~鹿児島中央で利用できるようになったほか、専用ICカード「EX-ICカード」の導入、年会費無料の「スマートEX」サービスの開始など、利便性を向上させつづけた結果、2022年12月24日には会員及び登録者数が1000万人の大台に乗りました。

2023年秋には旅行商品でも新幹線がチケットレス乗車可能・乗車直前まで変更可能になるほか、指定席の予約が最大一年前から開始されるようになります。

JR東海としては、EXサービスのサービス内容を拡大して利用者側のメリットを訴求し、利用者および利用者1人当たりの利用回数増加につなげようという狙いが見えます。

このように、JR東海をはじめとした鉄道事業者がネット予約・チケットレス乗車を積極的に拡大する傾向にあるのは、

  • 駅などの有人窓口に割く人員・機器の削減

  • 価格や内容について柔軟なサービス設定が可能に

  • ポイントサービスとの連携で顧客を囲い込むことが可能に(JRE POINT、キューポなど)

  • 券売機や改札機といった高価な機器の利用が減り、機器の導入や更新、保守にかかる費用を削減できる

といったメリットがあるためです。JR東海に限らず、鉄道事業者各社がネット予約・チケットレス乗車を推進する理由をしっかり理解しましょう!

6月19日 JR西日本 国内初 新幹線への再生可能エネルギー由来電力の導入に向けた契約締結を発表

【こんな人向け】鉄道における再生可能エネルギーの利用に関心がある人
【解説】カーボンニュートラル実現に向けた取り組み
オフサイトPPAとは、電力の売買契約の類型の一つで、企業にとっては大規模な再生可能エネルギー由来(再エネ)電力の調達が可能である、といったメリットがあります。

具体的には、再エネ発電設備を持つPPA事業者と、電力の購入者(需要家など)が再エネ電力の売買契約を締結し、需要地から離れた場所(オフサイト)の再エネ発電設備で発電された再エネ電力を購入者に向けて一般の送電網で供給する、という方式です。

今回の新幹線向け再生可能エネルギー由来電力の導入の場合、
PPA事業者=中国電力
需要場所=JR西日本の変電所
需要家=JR西日本
となっています。

企業にとっては、再エネ電力が大規模に、かつ一定の価格で一定の期間安定的に確保できるというメリットがあります。
鉄道に関わる仕事を目指すみなさんとしては、細かい仕組みはさておき、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みの一つとして「こういう取り組みがあるんだな」と知る程度でOKです。

【関連記事】鉄道と環境問題の関わりについて

「鉄道輸送の特長」「カーボンニュートラル実現に向けた取り組み」の2つの観点から取りあげています。

6月29日 JR東海・ジェイアール東海エージェンシー 地域と連携して関係人口を創出する新サイト「conomichi」をオープン

【こんな人向け】鉄道事業者と地域の関わりに関心がある人
【解説】地域の課題解決は鉄道事業者にとって他人ごとではない
沿線地域の価値向上は、短期的・長期的どちらの意味でも鉄道事業者にとって重要です。
人口減少などの問題を完全に解決することは難しいかもしれませんが、その勢いを弱めたり、また人口減少などによって生じうる様々な社会課題を解決したりすることは、沿線の自治体、住民にとっても重要な課題。

これらの社会課題解決に貢献する関係人口の創出を実現するために、楽しく課題解決に取り組める企画立案や、人を集めるための場としてはじまったのが「conomichi」です。

JR東海に限らず、こうした「地域が抱える社会課題の解決」は鉄道事業者にとって共通のテーマの一つであることを押さえておきましょう。

6月30日 近鉄・赤福 1日1回、近鉄名古屋行きのアーバンライナーで赤福餅を輸送することを発表

【こんな人向け】環境問題や2024年問題に関心がある人
【解説】鉄道による貨客混載輸送の長所
プレスリリースでも触れられているように、トラック便の一部でも鉄道輸送に置き換えることは、いわゆる「2024年問題」で懸念されるドライバー不足への対応や、二酸化炭素排出量の削減など、社会課題の解決に貢献に繋がります。

また、実際に食べたことがある方は分かるかと思いますが、赤福は生菓子のため、輸送時間は重要な要素です。
鉄道による貨客混載輸送においてはいわゆる「ラストワンマイル」においてトラックの積み替えが必要なためリードタイムがトラック輸送よりかかってしまうこともありますが、今回のケースでは

  • 特急列車であるアーバンライナーの速達性

  • 最終的な届け先が駅周辺の店舗

という好条件が重なり、トラック輸送より30分程度の所要時間短縮が見込まれているとのこと。
あとはコスト面や輸送量、といった点がどうなっているのかが気になるところではありますが、鉄道による貨客混載輸送の強みが発揮された好事例と言えそうです。

終わりに

6月のプレスリリースまとめは以上になります。
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前回(5月)のまとめはこちら

2023年のブルーリボン賞・ローレル賞の発表や、江ノ島電鉄が実施した1日限定のタッチ決済乗車無料キャンペーンなどについて取りあげています。

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