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【就活生向け】5分で読める、関西大手私鉄5社の共通点と違いを解説

今回は決算短信シリーズでも解説してきた中から関西の大手私鉄5社について、就職活動をするにあたり押さえておきたい共通点や違いについて簡単に解説します。
詳しい解説は個別の企業の記事がありますので、気になった方はぜひそちらの記事も参照ください!

なお、関東編はこちらです。


関西大手私鉄5社って?

今回取りあげるのは、近畿日本鉄道(近鉄)、南海電気鉄道(南海)、京阪電気鉄道(京阪)、阪急電鉄(阪急)、阪神電気鉄道(阪神)の5社です。このうち阪急と阪神は、現在では阪急阪神ホールディングスグループという同じ企業グループに所属しています。

なおこの「大手私鉄」はいずれも一定程度の経営規模がある企業ばかりですが歴史的経緯から同じ関西でも大阪市高速電気軌道(Osaka Metro)は入っていません。
学生のみなさんには、あくまで枠組みの一つとして考えていただければと思います。

就活するなら押さえておきたい、関西大手私鉄の共通点・特徴

①事業領域の広さと安定感

関東編でも取りあげましたが、関西大手私鉄5社の共通点のひとつは、事業領域の広さ、そして安定感です。

阪急阪神ホールディングスのセグメント別営業収益。事業領域が広く、営業収益のバランスが取れている例です。

沿線開発に力を入れてきた阪急や阪神は不動産に強く、近鉄は国際物流事業の存在感があり……といった各社ごとの違いこそあれ、不動産、流通、バスといった定番事業をはじめ、ホテル、レジャーといった事業を幅広く手掛けるのが一般的です。

国際物流事業が半数近くを占める近鉄グループホールディングスの営業収益。

また、鉄道は社会インフラに位置づけられていることもあって、その安定感は大きな魅力の一つです。コロナ禍という想定外の打撃こそありましたが、各社とも輸送人員は底を打って回復傾向にあります。

②競合と提携

関東では大手私鉄の路線が放射状に伸びる傾向があり、JRと私鉄の路線が並行する例はありますが、私鉄どうしで並行する例は珍しいです(京王と小田急は数少ない例外と言えます)。
一方、関西では京都~大阪~神戸のラインに複数の大手私鉄の路線が並行しています。

京都と大阪の間では阪急と京阪が、大阪と神戸の間では阪急と阪神が路線を有しており、国鉄から移行したJR西日本も加えて、並行する鉄道事業者が3社競合する状態が長年続いてきました。
近鉄とJRが競合する京都~奈良間や、南海とJRが競合する大阪~和歌山間も考慮に入れると、とにかく競合区間が多いのが関西大手私鉄の特徴と言えます。

そのような状況で、各社は速達性やサービスの向上に力を入れて差別化を図りました。
たとえば大阪~神戸間では、阪急が駅間距離をある程度確保した上で、車体の内装・外装の色彩を統一して上品さをアピールする一方、阪神は駅間を短くして細かく乗客を拾い、加速性に優れたジェットカーを投入しています。

京都~大阪間で阪急と競合する京阪は、テレビカーの導入を行ったほか、2階建て車両の導入(1995年)、追加料金を支払って座席指定ができる特別車両「プレミアムカー」の連結開始(2017年)といったサービス面の充実に継続して取り組んでいます。

一方、2006年には阪急と阪神が経営統合し、阪急阪神グループが発足しました。長年ライバルだった2社が同じグループになったことは当時話題になりましたが、それだけではなく両社の路線で定期券の相互利用が始まるなど、乗客にとってもメリットのある経営統合となりました。

関西の大手私鉄5社の違い

路線長などによるサービス面での違い

おなじ関西の大手私鉄といえど、各社が保有する路線長、そしてサービスに対する考え方には幅があります。

2府3県に私鉄の中でも最大の501.1kmにもおよぶ路線網を持っているのが近鉄。看板列車である名阪特急「ひのとり」をはじめとした有料特急のネットワークを有し、重厚長大な運転系統を持ちます。
その分だけ配属される可能性のある地域も広いです。

その一方、保有する路線長が50kmに満たない阪神や、140kmあまりの阪急、100km弱の京阪においては、伝統的に特急列車は料金不要で乗車できるようになっています。
これは運転距離の短さに加え、京阪間・阪神間の輸送人員の多さ、そして競争の激しさゆえに他社への対抗として料金不要でサービスを充実させることに力を注いできたことの表れと捉えられます。

ただし、近年広がりを見せる有料着席サービスの流れは関西にもおよび、京阪では2017年に一部列車にプレミアムカーの連結を開始。阪急も2024年7月には特急、通勤特急、準特急の一部の列車を対象に有料の座席指定サービス「PRiVACE」を開始することを発表するなど、変化が見られつつあります。

これらの鉄道会社とはまた異なる立ち位置なのが南海です。

なんばと和歌山方面の間で運転する特急「サザン」は、有料の座席指定サービスの先駆けとも捉えられる列車で、8両編成のうち4両が座席指定券(520円)が必要な指定席、残りの4両が運賃だけで利用できる自由席となっています。

その一方で、関西国際空港へのアクセスを担う「ラピート」や世界遺産である高野山へのアクセスを担う「こうや」といった全席指定の特急も運行しており、南海は性格の異なる特急列車を複数運行している鉄道会社といえます。

鉄道に関係するグループ会社の存在・キャリアとの関わり

関東の大手私鉄と同様に、関西の大手私鉄各社の間でも、入社後に担う可能性のある業務には鉄道会社ごとに違いがあります。自分が目指す分野が決まっているのならば、鉄道会社本体ではなくグループ会社を目指すという選択肢もあります。

たとえば阪急阪神ホールディングスグループには、阪神電鉄の車両メンテナンス・改造を行う阪神車両メンテナンス、鉄道電気で培った技術を活かし、情報通信事業やエンタテインメント事業にも進出する阪急阪神電気システムなど、多くの鉄道関連企業があります。

また車両製造を自社グループ内で行ってきた事業者もあり、現在も近鉄グループの近畿車輛が近鉄をはじめとした多数の鉄道事業者向けに車両を製造しているほか、阪急阪神ホールディングスグループにはかつて阪急をはじめとした多くの鉄道事業者に車両を製造し、現在も路面電車向けの車両製造などで名高いアルナ車両が存在しています。

志望する会社や採用形態を決めるにあたっては、自分がどのようなキャリアを築いていきたいのか――様々な領域で活躍していきたいのか、駅の現場で働き続けたいのか、専門職を追求していきたいのか――を、よく考えましょう。

まとめ

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文章および特記のない写真:交通新聞社
※記事中の情報は、この記事を公開した当時のものです。

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