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「検修設備といえば日本車両といわれ、その中での中心人物として活躍したい」鉄道車両の安全を支える技術力【社員インタビュー:日本車両・鉄道車両検修設備の設計・提案】

鉄道に関わるお仕事に携わっている方へインタビューを通じて、その仕事についてのお話を伺う「鉄道ゲンバ最前線!」。

第8回は、前回の松井さんに続き、日本車輌製造株式会社(愛知県名古屋市)でエンジニアリング本部エンジニアリング部に所属する水落さんにインタビューしました。鉄道車両を整備する現場で使われている台車組立装置や台車解体装置、トラバーサなどの設計はじめ、各鉄道事業者への提案を行っている水落さん。

取材するうちに、日本車輌製造の設備なしでは、鉄道車両整備の現場が成り立たないこと、そして、水落さんの設備を納入する際の思いなどを聞くことができました。

それではどうぞ!

自己紹介と入社のきっかけ

――本日はよろしくお願いいたします。早速ですが、自己紹介と入社のきっかけをお願いいたします。

本社の会議室でインタビューに応じてくれた水落さん

水落 エンジニアリング本部エンジニアリング部技術第一グループに勤務する水落雅貴(みずおちまさき)です。学生時代は機械工学を専攻しており、2017年4月に入社しました。

出身は富山県ですが、愛知県内で育ち、通学などで利用していた名古屋鉄道の車両※ にロゴが配置されているなどなじみが深い会社でした。工学系に進学したこともあり、ものづくりに携わりたかったですし、鉄道は人々の暮らしを支えるのに欠かせないインフラであり、自分もそれを支えたいと思ったのが入社のきっかけです。

※名古屋鉄道の最新車両9500系はじめ、名鉄の多くの車両が日本車両で作られている

 ――愛知県は自動車製造が盛んな土地柄ですが、なぜ日本車両なのでしょうか。

水落 学生時代にさまざまな企業を調べる中で、日本車両の工場を見学する機会がありましたが、そのスケール感に魅了されました。豊川製作所で職人の皆さんが大きな車両をトントン、カンカンと作っている姿がカッコよく、ぜひこれに携わりたいと思いました。

検修設備設計の仕事の中身とやりがい

――エンジニアリング部ではどのようなお仕事をされているのでしょうか。

水落 鉄道車両を整備する現場で使われている台車を組み立てる装置や台車を解体する装置など検修設備の設計が主な業務です。

お客さまはJR東海はじめ、JRの比率が高いのですが、民鉄など全国の鉄道事業者が対象です。装置をはじめ、足場など車両整備の現場にあるものであればあらゆるモノを作っています。設計検討がメインですが、お客さまへの提案業務も行います。

また、この部門は車両部門のように製作工場を持つことはなく、協力会社でお客さまに納める商品を作っているので、装置の検査、試運転の調整も業務の一つです。

実際に工場などに出向き、設備に触れる機会も多い。写真提供:日本車両

――業務の一日の流れを教えてください。

 水落 8時半が始業の時間です。出社後、メールチェックをしたり、今日どんな作業をやるかを確認したりして、事務処理を済ませます。

 その後、設計業務として図面の作図や機器選定の計算をすることもあれば、製作管理業務として装置の検査成績書を確認したりすることもあります。複数の案件が並列で動いていますので、実際に製造に入っている案件、提案中の案件といった具合に進捗(しんちょく)状況を見ながら、作業をしています。

提案や実際の現場には営業と一緒に行きますので、会話も多くなります。営業部隊は東京にいますので、電話やTeamsを使いコミュニケーションを図っています。

――業務にあたる中での楽しさを教えてください。

水落 カタログに掲載されている商品を売るというよりは、お客さまに合わせたカスタマイズ商品を売るのを得意としています。

同じ種類の装置でも、「こう使いたい」「こう検修したい」など、お客さまによって求める機能が変わってきます。そういった部分をお客さまから具体的に引き出し、良い提案をしていくか、といったところに仕事の楽しさを感じています。図面をおこし、実際の形にしていくということは私たちにしかできないことです。

自分たちで考え、検討したものが実際にできあがり、そしてお客さまに納品するまで、設計から納品まですべてに関わることができるのは業務のやりがいでもありますね。

――何か具体的に印象に残っていることはありますか。

水落 入社3年目のとき、普段から納めている装置の流用では対応できない難題を課せられました。どうやったら解決できるかという協議を社内で重ね、ラフスケッチから自分で描いて検討し、最終的にお客さまに無事納めることができたのが印象に残っています。

この装置というのは、車両工場などで車両を横移動させるためのトラバーサです。作業の安全性を高めるため、普通のトラバーサにはない、人の手を使わず台車を安全に載せる機構をつけたいという要望がありました。

社内でもそのようなトラバーサの納品実績はありませんでしたが、一つ一つ課題を解決し納品に至りました。大変ではありましたが、様々な経験を積むことができました。

 日本車両が製造したトラバーサの例。写真提供:日本車両

コミュニケーションの多い職場

――日本車両に入社してよかったことを教えてください。

 水落 就職活動をしている際に、何人かOBの方に会い、雰囲気がいい会社だなというのは感じていました。実際に入社してからもその印象は変わりません。入社すると、初めのうちは何でも相談できる先輩がつく仕組みがあります。

その期間が終わっても気軽に相談に乗ってくれますし、隣のグループの人でも声を掛けたら気軽に相談に乗ってくれますし、頼れる先輩がとても多いです。

 先輩方は「自分はこう思う」という経験に裏打ちされたポリシーをしっかり持っていますし、自分自身も先輩の言葉を聞くと納得しますし、そこがお客さまの信頼にもつながっているのだと思います。見習いたいです。

 ――入社前と入社後のギャップはありましたか。

 水落 社内での業務が多いので黙々とパソコンに向き合う時間が多いのかな、と思っていました。実際はパソコンに向き合ってばかりではありません。いい意味で職場内はにぎやかですし、隣に座っている人と議論する機会も闊達というのが印象です。

 ――コミュニケーションが活発なのですね。

 水落 社内はもちろんですが、外部の人との関わりも多い仕事なので、うまく進めるためにはコミュニケーションが不可欠です。自分のことだけを考えていては決してうまくいきません。相手のことを考えながら仕事を進めています。

 「相手のことを考えて進めていく」というのは学生時代になかった視点で、仕事を通じて成長した点だと思っています。

CADに向かうだけの仕事ではなく、社内外の人とのやり取りが不可欠。

――日本車両の技術力についてはどう感じていますか。

 水落 鉄道車両の検修設備というニッチな世界でこれまで実績を積み上げてきました。実績という面では諸先輩方の知識、ノウハウの積み重ねの賜物だと思っています。

 自分が技術力を感じた具体例を話しますと、担当の案件について、その図面でいいかどうかを確認する会議があるのですが、その場では、普段接している先輩、上司も一緒に出席されます。

会議の場でいただく指摘はどれも鋭く、そこまで考えていなかったな、と思うこともしばしばで、皆さんの技術力の高さを実感しています。自分自身もそういう先輩にもまれながら技術力を磨いているところです。

 ――今後の抱負、チャレンジしてみたいことをお聞かせください。

 水落 省人化や省力化、さらなる安全性が求められる昨今、検修設備は人力による作業も多いのが現状です。私個人としては、全部機械に任せようとは思いません。ここは機械、ここは人、というベストマッチを探していくのが私たちの役割でもあると考えています。そういう部分をお客さまに提案し、日本車両の設備を増やしていきたい。

検修設備といえば日本車両といわれ、その中での中心人物として活躍したいと思っています。

 また、設備の仕事をする上でも車両の知識が必要なので、どこかのタイミングで鉄道車両自体の製造に関わってみたいという気持ちもあります。

学生時代・就職活動を振り返って

 ――水落さんご自身の就職活動での苦労などを教えてください。

 水落 自分が何をしたいのか、という点で悩み、強み、弱みなど自分がどういう人間なのかを分析するところから始めました。研究室では、研究の合間に同期と模擬面談をしたり、「俺ってどういう人間なんだろう?」といった会話をしたりして、相手に「こういうところがいいよね」と言ってもらうことで自分の強みに気づくことができました。

 ――学生のうちにこれをしておけばよかったという後悔はありますか。

 水落 当時は「ものづくり」を軸に鉄道、航空を見ていましたが、それ以外の業界にももっと目を向ければよかった、というのはあります。

また、学生と社会人の大きな違いは、時間とコストへの意識の有無だと思っています。
社会人になると、時間、コストを意識しながら成果物を作ることに評価の重きが置かれますが、学生のうちはその辺を意識する必要もありません。自分が納得いくまで好きなことをやってほしいと思います。

学生の方へのメッセージ

――最後に、就職活動をしている学生、これから行う学生へのメッセージをお願いします。

 水落 なかなか自分を見つめなおす機会もありません。
自分が何をしたいのか、どういう点が自分の強みで、それをどう活かしていくのかということをこの機会にじっくり考えてほしいと思います。
その上で、自分が興味ある会社に足を運んで、会社の雰囲気を肌で感じ取り、本当にいいなと思える会社を見つけてほしいです。

 日本車両は私が担当している検修設備も含め、鉄道車両メインの会社ですが、杭打機や橋なども作っています。少しマニアックな世界ではありますが、この世界に興味ある人は選択肢に入れていただき、話でも聞いていただければと思います。

 ――本日はお忙しいところ、ありがとうございました!

写真提供:日本車両

終わりに

水落さんのお話からは、巨大な設備を顧客とのやり取りから作り上げて納品する検修設備設計の面白さや、顧客の要望を丁寧に聞き取り、持ち前の技術力で顧客課題の解決に導く日本車両のこだわりを感じることができました。

日本車両の検修設備は、様々な事業者に導入されています。みなさんが日頃乗っている列車の車両も、もしかしたら水落さんが携わった設備で整備されているものかもしれません。
そう考えると、とてもワクワクする仕事だと感じました。

なお、鉄道就活応援隊では鉄道車両の艤装設計を担う松井さんにもお話を伺っています。こちらからご覧ください!

今回紹介させていただいた会社

日本車輌製造
日本車輌製造の歴史は古く、設立は1896(明治29)年までさかのぼります。鉄道車両製造のトップメーカーとして日本の鉄道の発展に貢献してきました。

特に新幹線車両は東海道・山陽新幹線はじめ、4000両以上の車両を製造し、新幹線製造両数No.1の実績を誇っています。
鉄道車両のみならず、各種輸送用機器、橋梁、車両検修設備などの製造も手掛け、「インフラストラクチャー創造企業」として進化を続けています。

今回は名古屋市熱田区の本社にお邪魔し、取材させていただきました。

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なお日本車両に関してのニュースを知りたい方は
>>直近1年間の交通新聞電子版における「日本車輌製造」検索結果
もご覧ください! この交通新聞電子版のリンクからは、本来は有料となっている記事も無料で閲覧可能です。ぜひご活用ください。

2023年2月取材
撮影:木田慎一(交通新聞クリエイト)
聞き取り・企画・構成:交通新聞社
※記事中の情報は、この記事を公開した当時のものです。
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