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鉄道工事に大きな強み【就活生向け・四半期短信を読む③東鉄工業】

この記事では、四半期短信を読むシリーズの第3回として、東鉄工業2023年3月期第2四半期決算短信を読んでみます。

先日、四半期決算短信の読み方についての記事を公開しました。

その実践編として、これまでJR東海・京王電鉄を取りあげましたが、今回は鉄道のインフラメンテナンスにおける日本有数の企業、東鉄工業を取りあげます。

なお、鉄道業界各社の四半期短信については、こちらのリンクから交通新聞電子版の記事が読めます。JR各社や大手私鉄についての四半期決算について、有料記事を特別に全文公開です!

>>交通新聞電子版「四半期決算」検索結果

リンク先では東鉄工業を含め、鉄道業界の様々な企業の決算短信についても分析がありますので、ぜひご参照ください。


東鉄工業とは

東鉄工業は、1943年に鉄道のインフラを維持するために設立された国策会社「東京鐡道工業株式会社」がルーツです。
戦後に現在の商号へ変更した後も一貫して本社を東京に置き、鉄道関連工事の高い技術力を武器に成長してきました。JR東日本と関係の深い企業であり、同社の鉄道工事を数多く受注しています。

余談ですが、東鉄工業はプロ野球球団東京ヤクルトスワローズのオフィシャルスポンサーでもあります(2022年12月7日現在、スポンサー | 東京ヤクルトスワローズ)。
野球好きの方は、球場や試合の中継で社名を見かけたことのある方も多いのではないでしょうか。

まずは基本の数字から

まずは売上高・営業利益・経常利益について見ていきましょう。
2022年4月1日~2022年9月30日の連結経営成績は以下の通りです。

売上高:48,935(対前年同四半期7.8%増)
営業利益:2,420(31.8%増)
経常利益:2,622(28.2%増)
単位:百万円

東鉄工業2023年3月期第2四半期決算短信より

いずれの数字も対前年比で改善しています。
特に、営業利益・経常利益はそれぞれおよそ3割の増加
となりました。
次に、他社同様に、コロナ禍前の2019年と比較してみます。

これまで取りあげてきたJR東海や京王電鉄同様、鉄道会社ではない東鉄工業においても、コロナ禍前の水準には戻っていないことが分かります。
ただ対前年同四半期比の数字からも分かるように回復傾向にあるのは確かです。

建設業界の特徴的な勘定科目

建設業界は一つ一つの契約によって大きな金額が動き、また契約の成果物が完成するまでの時間も長くかかることが特徴です。

そのため、財務諸表においても、一般的な小売業や鉄道事業の財務諸表には出てこない勘定科目が出てきます。
この項では、建設会社の財務諸表を見る際に、知っておきおきたい勘定科目を説明します。

どれも売上と関係のある数字ですが、簡単に違いを説明すると以下の通りになります。

受注高

その期に受注した契約の総額を指します。受注してすぐに売上になるわけではないのですが、将来の売上(完成工事高)となるため重要な数字です。

完成工事高

完工高とも表記します。建設工事の施工が完了し引き渡した際に発生する売上のことで、一般的な企業の売上高に相当します
なお完成工事高に計上される工事の原価は完成工事原価と言い、こちらは一般的な企業の売上原価に相当します。

なお、現在では会計基準の変更によって、施工が途中の段階でも完了した分の金額を売上に計上できるようになりました。
その場合の完工高は「契約済みの工事で施工が完了した分にあたる金額」を指し、「施工高」という別の用語と概ね同じ意味となります。

繰越高

契約済みの建設工事の内、未着手の工事にあたる金額です。
他の勘定科目との関係で言うと、

前期の繰越高+受注高-施工高=次期の繰越高

となります。

四半期決算短信を見る際の注意

勘定科目以外にも、建設会社の四半期決算短信を見る際には独特の注意点があります。
それは、一般的に建設会社の売上高は年度の後半になるにつれて増えていく傾向にある点です。
そのため、年度の前半と後半の売上高を比較したりする際は、このことに留意する必要があります。

これは、かつて工事の売上を計上するのが工事の完成・引き渡し時点であった(工事完成基準と呼びます)ところ、工事の完成・引き渡しが年度末に集中していたためです。

しかし、2021年4月からは「収益認識に関する会計基準」という新しい会計基準が多くの企業に適用された結果、以前に比べると集中の度合いは弱まりました。

東鉄工業においても、2022年3月期の期首より「収益認識に関する会計基準」等を適用しています(2022年3月期決算短信21頁より)。

【より詳しく】建設業における売上高の計上方法の変更

会計基準の変化は専門的な内容になるため、就活生の方が意識する必要性は低いです。その上で会計基準の変更に関して詳しく知りたい方は、以下の外部サイトを参照してみてください。

実務者向けのページなので少し難しいかもしれませんが、新しい収益認識に関する会計基準が適用される前後の比較が分かりやすいです。

【就活生注目】東鉄工業の特徴

次に、四半期決算短信から読み取れる東鉄工業の特徴を探ってみましょう。

まずは事業構成からということで四半期決算短信10頁を見ると、「土木事業」と「建築事業」の二つに分けられていますが、もう少し細かく見たいところです。そのため、ここではIR説明会資料から数字を引きます。

上記のリンクから読める「2023年3月期第2四半期決算IR説明会資料」では、部門別売上高が「線路」「土木」「建築」「その他」の4つに分かれています。

2023年3月期第2四半期決算IR説明会資料」より編集部作成

「土木」が約4割を占めながらも、他の部門もバランスよく分布している印象です。それぞれの部門でどのような事業が行われているかを説明します。

「線路」部門の中身は、今ある線路を維持するための「メンテナンス」と、既存の線路を付け替える「移設・新設」の工事になります。

「土木」部門は、鉄道土木とそれ以外に分かれます。
鉄道土木では耐震補強工事やホームドアの設置工事などがあり、それ以外の分野では道路整備、河川改良などがあります。

「建築」部門においても、駅舎や駅ナカの商業施設といった鉄道関係に留まらず、マンション建築や太陽光パネル設置工事などを展開しています。

ここまで読んでいただいた方は、鉄道以外の工事も東鉄工業の事業領域であることに気付いたと思います。
では、鉄道とそれ以外の割合はどのようなものなのでしょうか。

この点に関しては、四半期決算短信の13頁に記載があります。同じ表にある、1年前の同じ期間(第2四半期連結累計期間)での数字と合わせて見てみましょう。

今年度と前年度で多少の変動はあるものの、鉄道に関係する売上高の占める割合が高いことが良く分かります。

決算短信から読む東鉄工業の今後

ここまでの内容で分かる通り、東鉄工業は売上高において鉄道関係の工事が占める割合が高く、その鉄道関係の工事をどれだけ受注できるのか、また工事単価がどうなるのか、といった点が業績に影響を与えると言えます。

また、鉄道関係の工事の中でも売上高の多くを占めるのは鉄道土木です。
鉄道施設のメンテナンスは安全運行に欠かせない領域であり、また近年ではホームドアの整備や耐震工事が各鉄道事業者で推進されています。
そのため、今後もある程度安定した需要が継続することが見込まれます。

その点では、2022年11月27日付で東鉄工業がJR東日本の持分法適用会社となり、従来よりさらに結びつきが強化されたことは、受注獲得へ大きなプラスとなるはずです。

東鉄工業について更に知りたい方は、以下のリンクから交通新聞電子版の関連記事も参考にしてください! 

>>交通新聞電子版「東鉄工業」の検索結果はこちら

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今回の取りあげた東鉄工業でも事業としている鉄道土木の仕事に興味を持った方は、以下の記事も参考にしてください!
「鉄道施設の魅力」について、保線などで長年鉄道施設の分野に携わり、日本鉄道施設協会の専務理事(当時)も務めた近藤邦弘さんへ聞いたインタビュー記事です。

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