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“ものづくり”への飽くなき探求心と人の温かさがあふれるゲンバ【社員インタビュー:総合車両製作所 横浜事業所】

こんにちは、鉄道就活応援隊編集部です。
鉄道に関わるお仕事に携わっている方へインタビューを通じて、その仕事についてのお話を伺う『鉄道ゲンバ最前線!』。

第三回は前回の株式会社総合車両製作所 和歌山事業所に続き、株式会社総合車両製作所 横浜事業所へお邪魔しました。横浜事業所ではJR東日本をはじめ国内外に向けた鉄道車両の製造や新型車両の設計・開発を手掛けています。今回は鉄道車両製造には欠かせない治具や加工のための生産設備の検討・導入に携わる仁科さんへインタビューしました。ベテランから若手まで多くの職人が集まる“ものづくり”のゲンバならではの探求心と人の温かさがあふれる、魅力的な職場がそこにありました。

それではどうぞ!

自己紹介と入社のきっかけ

――本日はよろしくお願いいたします。早速ですが、自己紹介と入社のきっかけをお聞かせください

仁科 よろしくお願いいたします。総合車両製作所 生産本部 生産管理部(生産技術)の仁科拓馬(にしなたくま)と申します。入社6年目で現在の生産管理部に配属されて3年目になります。こどもの頃から“ものづくり”が好きで、大学は工学部の機械工学科に入りました。

学生時代にはCADを学び、チームで一人乗りの車を製作したこともあります。そのため、社会人になっても“ものづくり”を体感できる仕事をしたいと思っていました。また、趣味はF1やSuper GTなどのモータースポーツの観戦ですが、ほかにも鉄道旅行が好きで、色々な土地へ旅行する際に様々な鉄道車両に乗りました。その時に鉄道車両を作ってみたいと思い、総合車両製作所を志望するきっかけにもなりました。

前身の東急車輛製造の時に製造が始まり、
2007年に鉄道友の会ローレル賞を受賞したE233系の大型模型と一緒に
※撮影のため一時的にマスクを外しています

入社後の配属と現在の生産技術の業務

――入社後に配属された部署ではどのような業務を行っていましたか

仁科 入社して3か月ほど新入社員教育があります。当社は“ものづくり”の会社ですので、新入社員は全員製造部門からスタートするのですが、私は第一志望だった生産部構体課に配属されました。構体課は金属の板を溶接して車体そのものを組み立てていく部署です。

ちなみにほかには、車体の内外に電線や配管を取り付けていくぎ装課や、お客様から見える扉や椅子など車内外設備の取り付けを担う内装課、安全で乗り心地の良い走行を支える台車の製作を担う台車課があります。

構体課では約2か月かけて各班を見学し、側構体(車体の側面にあたる部分)を製作する班に入ってから抵抗スポット溶接やレーザー溶接、自動機(ロボットなど)の操作を担当しました。その約2年後には構体課内で製造作業のサポートを行うスタッフに配属になり、それまでの側構体だけでなく構体課の様々な工程や作業に関わるようになりました。そしてその半年後に現在の生産技術へ異動しています。

――生産技術ではどのような業務を担っていますか

仁科 生産技術の主な業務は車両製造に使用する治具(ジグ:組み立てや加工時の部品の位置決めや精度維持といった製品品質の確保や、作業効率化など生産性の向上を目的とした製造補助機器)の設計や、生産設備の計画や検討、そして導入を担っています。また、生産をアシストする新技術の調査や試験、導入に向けた取り組みなど、製造中の車両に直接触れて作業をするというよりは、製造現場で車両製造に携わる人たちにとって欠かせない業務を担当しています。

私が製造に関わった鉄道車両はたくさんありますが、例えばJR東日本E7系、FV-E991系、東急電鉄2020系、東京都交通局浅草線5500形、京王電鉄5000系、小田急電鉄5000形、京浜急行1000形1890番台(20次車)などがあります。

クレーンで側構体ブロックを吊り上げ、組み立てラインへ運ぶ

“ものづくり”の仕事ならではのやりがい

――生産技術ならではのやりがいを教えてください

仁科 生産技術の仕事は、溶接や組み立てなど車両に直接触れる製造作業を行うということはほとんどありません。私たちは製造現場の人たちが要望する治具や、生産設備の計画や導入に携わるのですが、これも私がしたかった“ものづくり”の一つです。鉄道車両は少量多種生産なので、治具の種類も必然的に多くなります。

――どのくらいの治具を製作してきましたか

仁科 例えば同じ系列がベースの車両でも先頭車両の形状が違うだけで必要な治具は変わります。生産技術に配属されて約3年ですが、細かい物も含めれば約100以上の治具や機器を製作したのではないでしょうか。

――すごい数ですが、どのように作り上げていくのですか

仁科 治具の設計は製造現場の担当者と綿密に打ち合わせをして、要望に沿った治具を考案することから始まります。使う人が使いやすいものを作るということを心掛けながら、図面に向かう作業が私は好きです。出来上がった治具はそのまますぐ使えるものもあれば、製造現場の人の使い勝手を聞いてさらに改良を加えるものもあります。そういった試行錯誤が“ものづくり”の真髄だと感じています。

――ほかにやりがいを感じることはありますか

仁科 生産設備の計画や検討などの設備導入業務もやりがいがあります。ある作業に着目し、その作業の効率を高め、高品質で量産するために必要なことを検討し、そのうえでコスト面を考慮するなど、新たな生産設備の導入には様々な構想や検討が必要です。時には昔からある機械の構造を見直して大きく変更することもありますが、私はそういった機械の構想や検討をするのも好きです。

生産設備は大型なものになると計画から本運用まで1年以上かかることもありますが、我が社が誇るステンレス車両『sustina』の製造に欠かせないもので、手塩にかけた設備がしっかり車両製造に携わっている姿を見ると本当に嬉しくなります。

――やりたかったことが叶っているということでしょうか

仁科 そうですね。生産ラインに携われることで、“ものづくり”をしている実感がわいてきます。完成した治具や生産設備を製造現場の人に使用してもらい「良かったよ、ありがとう」と言ってもらえる時、そして自分が関わった車両が横浜事業所を出場する時に、大きなやりがいを感じています。

側構体の組み立てを行う様子

勤務の流れと残業時間

――勤務の流れについて教えてください

仁科 横浜事業所は8時始業、17時終業で、休憩はお昼休みがあるほか、午前と午後に10分休憩があります(フレックスタイム制度が導入されていない部署の場合)。勤務の流れですが、生産技術は治具の設計や生産設備の計画だけでなく、取引先や製造担当者の方たちと打ち合わせなど、業務は多岐にわたるのでその日によって変わります。

ちなみに忙しくなる時は新設計車両を受注した時で、特に車両製造に必要な新規治具の製作が多くなります。そのため繁忙期は不定期ですが、新設計車両製造の時期はある程度事前にわかるものなので予想がつくため、大まかなスケジュール調整もしやすいです。

――残業することもありますか

仁科 あります。残業時間は月平均で約13時間です。それこそ新設計車両製造時の忙しい時期では残業時間も多くなりがちですが、月に2回定時退社日があり、会社も個人も残業しすぎないように注意しています。

――どのようなことに注意していますか

仁科 治具の設計については期限が決まっているうえ、抱える案件が多くなるため、時間を忘れて没頭しがちなので、特に気を付けています。時間を決めて作業したり、先を見据えて前倒しでできる作業を進め、忙しい時期に詰め込み過ぎないようにスケジュールを管理することが大切になります。仕事にメリハリをつけて、スケジュール管理をしっかりできれば休暇も取りやすくなります。

――ちなみに「これは大変だった」という仕事はありますか

仁科 先ほどもお話しましたが、大型の生産設備の導入時が大変でしたね。発注した設備の納入時期が近づくとそれにつきっきりになったり、製造現場に設置されてから本運用に入るまでの調整が大変だったりしました。もちろんその期間も治具の設計やそのほかの業務もあるのでかなり忙しくなりました。まさに機械とのやり取りをするのですが、様々なやり取りの後にしっかり動いてくれた時はやりがいを感じました。

CADを駆使して製図

職場の雰囲気

――所属している班やチームの雰囲気はどうですか

仁科 生産技術は治具の設計や生産設備の計画などが主で、例えば構体(車体)では屋根や妻面(連結面)などの部位ごとにそれぞれ一人ずつ担当が決まっています。側面は先輩と二人で担当しますが、先頭部は私一人が担当しているという感じです。

――チームで情報共有しながら、個で進めていく感じでしょうか

仁科 はい、チームで全体を把握しながら、とある一つの部位を個が担当するイメージです。ミーティングでお互いの状況を共有したり、大変な作業だったら声を出して助け合うなどしているので、チームとしての力も強いです。特にイレギュラーな案件や、難しい作業などで詰まっている時は先輩方が声をかけてくれます。ひとりで抱え込むのではなく先輩に伺ったり、逆に来て教えてもらったりしているので、放っておかれることはありません。特に配属されたばかりの時はわからないことも多いのですが、先輩に助けてもらったことも結構ありました

――チーム全員が自分事のようにとらえているのですね

仁科 そうですね。一番良くないのは一つの作業がおしてしまい、製造工程全体が止まることです。そのため、製造現場で機械トラブルなどが発生した際は最優先で駆けつけますし、ストップしないようチームが協力し合う雰囲気なので仕事がしやすいと感じますね。その状態を維持するためにもチームの中で情報を共有し、コミュニケーションを取ることも大切だと感じます。また、チーム内だけでなく、車両を直接製造する製造現場の方たちも年齢に関係なく話しやすい環境で良いと感じています。風通しが良く、温かな雰囲気がありますね。

――コミュニケーションの取り方について教えてください

仁科 会社にはサークルもあるので、そちらでコミュニケーションを取っている人もいますが、私は特に所属はしておらず、チーム内や違う部署の同期と個人的にコミュニケーションを取っています。新型コロナウイルスが広がる前はよく飲み会を開いたりもしていましたね。

撮影の合間やすれ違いざまに先輩や同僚から声をかけられていた仁科さん
普段からコミュニケーションを取っていることが伺える一幕でした

今の自分と将来の目標

――新人の頃からスキルアップしたと感じる部分はありますか

仁科 基本的にはまだまだ改善していきたいと思っていますが、コミュニケーション力やスケジュール管理、自身の考えを整理し伝える力が向上したように感じます。そのほか、製図や材料力学の知識はもちろん、製作方法やコストを意識するなど、会社にとって必要な“ものづくり”の考え方も身に付きました。

――会社内や業務の中でご自身が目指す目標やビジョンはありますか

仁科 “ものづくり”の職人として、上司や先輩のように各取り組みに対して自分自身で答えを出し判断できる人になりたいです。そのためにも様々な知識や技術の引き出しをたくさん持つことが必要と感じています。具体的な仕事の目標としては、今までのような大型の生産設備導入などの大きな案件により多く携わりたいです。

また、2021年にJR東日本の新幹線車両E7系が出場していきましたが、最初の編成の製造を始めたのは私が入社する前です。だからこそ、新幹線や特急などのカッコいい車両の製造を、立ち上げから関わりたいと強く思っています。

組み上がった車体。これから車内設備のラインへ入っていく

就活生へ向けて

――総合車両製作所 横浜事業所で働きたいと考えている就活生へひとことお願いします

仁科 生産技術の話にはなりますが、この部署は新しい技術を取り入れることが多いです。そのため、ちょっとした技術でも新しい情報であれば気付けることが大切です。なので、アンテナを高くして、視野を広く、いろんなことに興味を持てることが大切かなと思います。

また、コミュニケーションの基本でもありますが、人の話を聞けて、自身の考えや困っていることを素直に言えるという姿勢が重要ですね。多くの人に伝えるという意味ではなく、仕事上で関わる人だけでも、自分がどう考えているかを正確に伝えることができれば良いかと思います。自分の考えが相手に伝わるよう言葉を発してほしいと思います。

――本日はお忙しいところ、ありがとうございました。

終わりに

今回のインタビューを通じて感じたのは“ものづくり”への飽くなき探求心と、仁科さんや日々努力を重ねるゲンバの人々の関りが実に温かかったということです。製造現場の方にも仁科さんを通じて何度か取材撮影のお願いをしたのですが、若手からベテランの職人に至るまで、皆が仁科さんのお願いを快く受け入れていました。仁科さんの日頃のコミュニケーションはもちろん、治具や生産設備などの“ものづくり”を通して、製造現場の方々と信頼関係を築き上げてきたからに違いありません。年齢に関係なく、互いを認め合い素直に感謝しあえるゲンバが実に素晴らしいものに感じました。

第二回ではコンテナ製造を手掛ける和歌山事業所の記事を公開しています。あわせてどうぞ!

総合車両製作所の採用情報インターンの情報について知りたい方は、下記リンクからご確認ください。

今回紹介させていただいた会社

株式会社総合車両製作所(J-TREC)は鉄道車両や鉄道貨物コンテナを製造する、東日本旅客鉄道会社(JR東日本)グループの輸送用機器メーカーで、日本経済の要である鉄道を支える“ものづくり”の会社です。JR東日本の新幹線や通勤型車両だけでなく、海外向け輸出用車両、そして水素燃料電池を搭載した最新鋭の鉄道車両『HYBARI』を製造するなど、サスティナブルな社会へ貢献を目指し、日夜歩み続けています。

全国に合計5ケ所の事業所、事務所、支店を展開する総合車両製作所ですが、今回は神奈川県横浜市金沢区にある本社、横浜事業所を訪ねました。

より詳しく知りたい方は公式サイト・および直近1年間の交通新聞電子版における「総合車両製作所」検索結果から記事をご覧ください! この交通新聞電子版のリンクからは、本来は有料となっている記事も無料で閲覧可能です。ぜひご活用ください。

2022年12月取材
撮影・聞き手:助川康史(マシマ・レイルウェイ・ピクチャーズ)
企画・構成:交通新聞社
※記事中の情報は、この記事を公開した当時のものです。
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