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コミュニケーションを重視した風土から生まれる働きやすさ 【社員インタビュー:総合車両製作所 和歌山事業所】

こんにちは、鉄道就活応援隊編集部です。
鉄道に関わるお仕事に携わっている方へインタビューを通じて、その仕事についてのお話を伺う「鉄道ゲンバ最前線!」。

第二回は、株式会社総合車両製作所 和歌山事業所へお邪魔して、鉄道用貨物コンテナの設計に携わる名畑さんと瀬越さんへインタビューしました。ゲンバを取材すると、人と人との繋がりといったあたたかい風土から生まれる働きやすい職場環境が見えてきました。

それではどうぞ!

自己紹介と入社のきっかけ

――本日はよろしくお願いいたします。早速ですが、お二人の自己紹介と入社のきっかけをお願いいたします。

名畑 よろしくお願いいたします。総合車両製作所 生産本部 和歌山事業所 設計課 主任の名畑信克(なばたのぶかつ)と申します。主に鉄道用貨物コンテナの設計をしており、2013年入社の10年目で、設計課には異動してきたばかりです。
 工学部建築工学科で構造力学を学んだ後、地元の和歌山に戻り設計職を探しているときに、鉄道輸送機器メーカーでコンテナを製造しているということに興味を持ち、総合車両製作所の採用試験を受けたのがきっかけです。学生時代はCADにも触れていたので、そのスキルを活かせるのではないかと思いました。自分が携わった製品を日常で見る機会があり、達成感を得られそうだったというのもきっかけのひとつですね。

瀬越 よろしくお願いいたします。同じく設計課の瀬越奈央子(せごしなおこ)と申します。2016年入社の6年目で、私も主に鉄道用貨物コンテナの設計をしています。
 農学部で植物の病気の研究をしており、新卒でほかの会社に入ったのですが、そこでは技術採用され設計を担当しました。その時に覚えたCADの技術を活かそうと思い、総合車両製作所に入社しました。

取材に応じてくれた名畑さん(左)と瀬越さん(右)の後ろには完成したコンテナがそびえ立つ(撮影のため一時的にマスクを外しています)

設計課の業務とは

――設計課の具体的な業務内容を教えてください

名畑 設計課ということでコンテナの設計が主な業務です。ただ一日中コンテナの図面を作成しているというわけではなく、時には資料を作成したり、お客様のご要望を検討・調査したり、製図以外の業務も多いです。ちなみに、一つの案件はひとりで対応するのが基本です。複数の案件を同時に行うこともありますが、期限を見据えて自分でスケジュールを調整し、設計作業などに取り組みます。業務量が増えてくると大変ですが、ある程度は自分自身で業務のペースをコントロールできるのが和歌山事業所の設計職として良い点だと思います。

――コンテナ設計で忙しい時期というのはあるのですか

瀬越 当社の大口のお客様としては日本貨物鉄道株式会社様(JR貨物)と日本石油輸送株式会社様(JOT)が挙げられます。生産量的にはこの2社のコンテナを製作することが多く、次に多いのが、そのほかの運送業のお客様からご発注頂く、通称“私有コンテナ”です。大口2社向けのコンテナはまとまった数になるため、設計を新しく行うことは少ないのですが、私有コンテナの場合はお客様ごとに仕様が異なりますので、それに向けての設計が夏ごろに多くなるというサイクルがあります。スムーズに仕事をするためにも、年間を通した作業スケジュールを考えることも大切ですね。近年は強度試験の回数を多くするといったご要望もあり、作業工程も増えてきているので、なかなか当初の予定通りに進まないこともありますが、調整してうまくできたときには達成感があります。

――名畑さんは異動してきて日が浅いとのことですが、これまでにどのような経験をされてきましたか

名畑 私は初め、線路の分岐器の設計部門に配属されました。現在、分岐器製造は行っておりませんが、次の異動先が鉄道車両の部品を製作する部署で、自社の横浜事業所や新津事業所へ輸送する部品の生産管理をしていました。最近の車両ではJR東日本様向けのE353系特急電車の台車枠の製作に携わっていましたね。生産管理ではそれぞれの事業所の生産管理担当者とやりとりして、製作依頼に沿って製作数や日程などを調整し、工程を管理する仕事になります。ちなみに、新津事業所への部品配送は和歌山事業所で製作した出来立てほやほやのコンテナで運ぶこともあります。

製造現場からの質問に答えるのも設計課の業務

製造した製品に街中で出あえる仕事

――和歌山事業所ならではの自慢の逸品はありますか

瀬越 和歌山事業所は国内唯一の鉄道用貨物コンテナ専用組立ラインを保有しています。JRの路線を走っている貨物列車に搭載されているコンテナの多くが当社製のものです。トラックなどで見かける海上コンテナよりも耐候性(天候による劣化などへの耐久性)が高く、お客様からも信頼されています。中でも特徴的なコンテナといえば、通常のコンテナの3倍近い長さになる31フィートの3方開きコンテナ『パノラマボックス』で、側面が左右に開くことで荷物の積み下ろしをしやすくなっています。トラックでよく見るウイングタイプの荷台と同じような使い方ができますが、開口部の扉が折り畳み式の観音開きになっており、扉の出っ張りが一般的な大きさの12フィートコンテナと同じくらいコンパクトになっていて、強度を持たせたまま、開口部を極力広く設計したのが特徴です。

名畑 3方開きコンテナは片方の妻面(進行方向に対して前方もしくは後方に来る面のこと)と側面両方の扉が開くというのがポイントで、31フィートという大きなコンテナでありながら、側面でも人の出入りや荷物の出し入れが可能です。このコンテナは全国でも和歌山事業所だけが製作している特別なコンテナなんですよ。

――実際にお仕事されて感じる“やりがい”を教えてください

瀬越 入社以来コンテナ設計ですが、やはりコンテナは鉄道や道路など街中で見かける機会があって、自分自身が手掛けたものが使われているところを直接見られるということにやりがいを感じています。ほかにもコンテナを使用しているお客様とお話しする機会もあり、ご感想だけでなくご意見を頂くこともあります。そのご意見をフィードバックして、より良いものを作り上げていくことにもやりがいを感じます。

名畑 異動してきたばかりということもあり、今は図面作成や資料作成をメインで行っていますが、コンテナの扉の開閉などを行うトラック運転手の方などから生の声を伺い、使用者サイドの目線で考えたより使いやすいものを設計するため、日々試行錯誤しています。いずれは設計したコンテナを線路上や街中などで見る機会がもっと増えれば、設計者としてのやりがいをさらに強く感じられるのだと思います。何より鉄道用貨物コンテナはモーダルシフトといった環境保全に役立っている製品なので、誰もが目にする製品でありながら地球にも優しく、脱炭素社会に貢献できることが今のやりがいにつながっていますね。

整理整頓された机で、時には1日中図面作成に取り掛かることも

勤務の流れと残業時間

――気になるのが勤務体系ですが

名畑 和歌山事業所は8時30分始業で8時35分~45分のラジオ体操と朝礼から一日が始まります。そのあとは席に戻ってメールチェック、その日にやることをリストアップするなどしてから業務に取り掛かります。設計図の作成のほか、資料作成やお客様からの依頼の調査、製造担当と打ち合わせ、出来上がった製品が図面通りの仕上がりか確認する検品などが主な業務です。17時30分終業で、休憩は昼休憩のほか午前と午後に10分休憩があります。
 若手社員を含め、大阪方面から通勤している社員も多いです。自家用車が無い場合は会社の専用バスで通勤していますが、バスのダイヤに合わせての通勤となるので、時間もノンフレックスになっています。

――より気になるのが残業頻度ですが

瀬越 私はこどもの送り迎えがあるのでほぼ定時で帰らせてもらっています。設計課で業務量を考慮してもらっているので支障はありませんね。皆さん協力的で助かっています。

名畑 私もこどもの迎えがあるときは必ず定時で上がらせてもらっていますが、納期が迫っていて時間が足りなそうなときは残業をしています。設計課は個人個人で案件を抱えている場合が多いので、残業の割合は個人によるというところでしょうか。繁忙月で私は約30時間残業していました。一日にだいたい1時間か2時間くらい残業している感じですね。設計は、そのこだわりからつい時間をかけてしまいがちなので、その日やることや締め切りをしっかり設定して、フロントローディング(前倒し可能な工程を早めに進めることで後工程の負荷を軽減すること)などを組み込みつつ、極端に負担がかからないようにしています。

図面を囲んで打ち合わせ

コミュニケーションを取りやすい風土だから周りのフォローを得やすい

――設計課では各個人の状況を考えながらフレキシブルに協力し合っているということでしょうか

瀬越 コンテナ設計はほかの人と案件を共有するということが少ないので、状況によっては多く抱え込んだりすることがあります。ただ業務の進捗は常に報告しているので、周りのサポートも得られる環境ではありますね。

――今までの話を伺っていると、とても働きやすい環境だと感じます

瀬越 そうですね、「あれもやれ、これもやれ」という感じではないです。期日に間に合わなくなりそうな時は周りもサポートに入ってくれます。その割り振りを考える課長の胃は痛くなっていると思いますが……。

名畑 普段は個人の裁量に任せてもらいつつ、日々の報告を基にピンチになりそうだと上長のコントロールが入るといった具合です。

――新人さんにとっては不慣れなことも多いと思いますが、その場合の職場の雰囲気やフォローはどんな感じでしょうか

名畑 製造業というと職人気質で話しかけづらいと思うかもしれませんが、実は話しかけると気さくに返してくれる面倒見の良い先輩ばかりです。新入社員や若手にとってベテランの方に話しかけるのは勇気がいるかもしれませんが、思い切ってコミュニケーションを取ってみて欲しいです。
 コミュニケーションといえば、新型コロナウイルス感染症が広がる前は、職場レクリエーションや懇親会が時々開かれていました。先日、感染症拡大防止対策を施し、数年ぶりにレクリエーションが開かれ、地引網体験&バーベキューをしました。過去にはボウリング大会が行われたこともありましたね。これらは自由参加です。ほかにもツーリング部などのクラブもあり、プライベートでさらに親睦を深めている社員もいます。

瀬越 設計のミスを製造現場で快くフォローしてくれることもあり、こういった普段の親睦が良い関係を築いてくれるひとつなのかもしれません。和歌山事業所の雰囲気は本当に良いと思います。一生懸命やっている人に親身になって応援してくれるし教えてくれるというのが、関西人気質なんでしょうね。だからこそコミュニケーションは大切だと思います。特に設計と製造現場の関係が非常に近いですし、和歌山事業所の新入社員研修は各部署を約1週間ずつ回るので、皆が顔見知りになります。

――そんな先輩方の技術や知識などですごいと感じることはありますか

名畑 コンテナは外見が同じでも、容量を増やそうとちょっと背を高くしたり、お客様のご要望でマイナーチェンジをすることで、部品の干渉や形状が異なってくることもあります。私はコンテナ設計を始めたばかりなのでそういったところは経験が少なく、わからなくて先輩や上司に聞くことがあるのですが、データが頭にインプットされているのですぐに答えが出てくるんですよ。それが本当にすごくて、自分がその域になるにはどれだけ経験を積めばいいんだろうと思ってしまいます。

――そういったところは“感覚”なのでしょうか

瀬越 先輩や上司のそういうところは“感覚”というか、担当者ならではの“記憶”みたいなものが多いですね。先輩方も「背中見て覚えろ!」ということは無く、わからない時はその都度聞いて、徐々に自分も把握していきました。私自身も担当する案件が新しくなる度に身につく知識や技術が増えていきます。こういったものは、非常に多岐にわたり、かつ日々更新されていくものなので、どうしてもマニュアルで教えることが難しいです。そのため身についた知識や技術、そして感覚や経験を聞き、そして自分たちが後輩に伝えていき、繋げていくのだなと思います。

図面どおりに製造されているか入念にチェック

――入社して良かったと感じることは

名畑 やっぱり働きやすい企業であるということが良かったと感じています。和歌山事業所は競い合いながらも協力し合うという雰囲気なので、人間関係も良好だと思います。先ほども話しましたが、自分のこともやりつつ、ほかの人の面倒も見るというような、関西人ならではの気質も良い環境を生み出しているのではないでしょうか。

瀬越 和歌山事業所の規模感というのも良いんでしょうね。新人さんにとっても、頼りになる先輩や上司もいますし、休暇などの申請もしやすい雰囲気です。なので趣味の旅行なども行きやすくて、先日も家族と一緒に三重県のナガシマスパーランドにあるアンパンマンミュージアムへ行ってきました。こどもがアンパンマン大好きなので。

名畑 私も休みの取りやすさを感じています。私自身旅行好きで、休日は家族と白浜方面へよく行きます。それこそ夏は海に行ったり、家族の誕生日にアドベンチャーワールドへ行ったりと、家族旅行としてはルーティンになっています。

瀬越 設計課はもちろん、製造も「誰々が休みだから、ここはみんなでカバーしよう!」とチームで一体となってやっていることが多いですね。和歌山事業所は新人もベテランも関係なく協力し合っていると思いますし、そう感じている社員も多いと思います。そういった和歌山事業所の風土が働きやすい職場と感じるのだと思います。

防災備蓄コンテナ『オクダケ』
設置型コンテナの中に救助用品や照明電源、給水や生活用品などが用意されたもので、鉄道用貨物コンテナの堅牢性と耐久性を活かした商品となっている

和歌山事業所のこれからと、就活生へ向けてメッセージ

――今後「こういうものを作ってみたい!」というものはありますか

名畑 鉄道用貨物コンテナだけでなく、当社で開発した防災備蓄コンテナ『オクダケ』やコンテナハウスに設置型のコンテナなど、お客様のニーズに合わせた商品を開発していきたいですね。また、一層環境面や健康面に優しい素材を考え、無駄を出さないSDGsに繋がるものを生み出していきたいですね。

瀬越 無駄を出さないということでは、以前から素材の廃棄量が少なくなるように心がけて図面作成していましたので、今後も続けていきたいです。また、最近ではメーカーと塗料の改良を模索しています。コスト面と塗膜性能の両立を目指しており、これからも挑戦していきたいですね。

――最後に「総合車両製作所和歌山事業所で働きたい!」と考えている就活生へアドバイスはありますか

瀬越 仕事に向き合う姿勢も大切ですが、人間関係を大切にして欲しいですね。だから積極的にコミュニケーションを取ってください。技術や知識は後からついてきますし、私たち先輩も一生懸命教えます!

名畑 私もコミュニケーションを取ることが大切だと思います。あとは前向きに問題にぶつかっていくことですね。先輩や上司はその姿を見ていて、そういったところからフォローやコミュニケーションを取ってくれます。そういう気持ちを持っている方は、和歌山事業所は大変働きやすい職場環境だと思いますよ。

――本日はお忙しいところ、ありがとうございました

終わりに

インタビューを通じて感じたのは、真摯に業務に取り組んでいることはもちろん、あたたかくておおらかな雰囲気でした。このような風土が働きやすさと、コミュニケーションの取りやすさに繋がっているのだと思います。また、自分たちが携わった製造物を街中で見られることはとても素敵なことで、やりがいを感じる場面だと思います。

後日、横浜事業所も取材させていただきました。こちらもあわせてどうぞ!

総合車両製作所の採用情報インターンの情報について知りたい方は、下記リンクからご確認ください。

鉄道車両機械技術についての記事はこちら

鉄道就活応援隊では今後もこの『鉄道ゲンバ最前線!』シリーズほか、鉄道に関わる仕事を目指す方に役立つ様々な情報をお届けします。
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今回紹介させていただいた会社

株式会社総合車両製作所(J-TREC)は鉄道車両や鉄道用貨物コンテナを製造する、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)グループの輸送用機器メーカーで、日本経済の要である鉄道を支える『ものづくり』の会社です。JR東日本の新幹線や通勤型車両だけでなく、水素燃料電池を搭載した最新鋭の鉄道車両『HYBARI』を製造するなど、サスティナブルな社会への貢献を目指し、日夜歩み続けています。

本社である横浜事業所を含め、全国に合計5カ所の事業所、事務所、支店を展開する総合車両製作所ですが、今回は和歌山県紀の川市にある和歌山事業所を訪ねました。

より詳しく知りたい方は公式サイト・および直近1年間の交通新聞電子版における「総合車両製作所」検索結果から記事をご覧ください! この交通新聞電子版のリンクからは、本来は有料となっている記事も無料で閲覧可能です。ぜひご活用ください。

2022年11月取材
撮影・聞き手:助川康史(マシマ・レイルウェイ・ピクチャーズ)
企画・構成:交通新聞社
※記事中の情報は、この記事を公開した当時のものです。
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