【顔認証改札の導入や初任給引上げなど】鉄道業界 就活生が気になるプレスリリースまとめ【2023年3月】
鉄道就活応援隊のTwitterでは、鉄道業界各社のプレスリリースから就活生向けの話題をピックアップして、不定期にお届けしています。
なお前回(2月)のまとめはこちらです。
プレスリリースを読むのは単なる情報収集だけではなく
・企業がどういった考えで施策を打っているのか
・自分の目指すことと、その企業の考えに重なるところがあるか
といったことを探るのにも有効です。
今回の記事では、そんなプレスリリースについてのツイートから2023年3月の1ヶ月間をピックアップ。140字の制限があるTwitterでは伝えきれなかった事象も加えながらお届けします。
3月
3月はダイヤ改正があり、また春闘の時期ということで賃金関係についても大きな動きがある月です。
なお、日付はプレスリリースの発表日ではなく、鉄道就活応援隊でツイートした日ベースですのでご注意ください。それではどうぞ!
3月9日 高見沢サイバネティックス 手ぶらで改札を通過できる顔認証改札がOsaka Metroに採用決定
【就活生の目線】
プレスリリースの発出元である高見沢サイバネティックスは、駅で見かける多機能券売機のパイオニアです。BtoBの企業のため一般の方への知名度はその実績ほど高くはありませんが、券売機に加えホームドアなどの鉄道に関わる様々な機械を製造しています。
今回は2024年度内にはOsaka Metro全駅に導入ということで、そのスピード感も驚きですね。
3月28日 JR西日本 大阪駅における顔認証改札機実証実験に向けてモニター募集を開始
日付が前後するのですが、プレスリリースの発表日(3月2日)や話題の関連性に鑑みここに配置しました。
【就活生の目線】
プレスリリースによると、顔認証改札システムの構築は大日本印刷・JR西日本テクシア・JR 西日本の共同プロジェクトで、顔認証改札機はJR西日本テクシアが構築したとのこと。
JR西日本テクシアはJR西日本グループの企業で、ホームドアの製造や駅舎用エレベーターの製造、自動改札機の製造などを担っています。
ここまで挙げた高見沢サイバネティックスやJR西日本テクシアなど、駅にある機器の会社についてまとめた記事はこちら!
3月13日 JR西日本 初任給引上げ・若手社員の基本給引上げを発表
【就活生の目線】
先日JR東日本から発表があった初任給引上げが、JR西日本からも発表されました。コロナ禍の影響から完全には抜け切れていない状況での人件費増につながる施策は、優秀な人材を確保することへの危機感の表れともいえます。
一方でJR西日本は採用抑制や定年による自然減などを利用した人員削減を進めてもおり、今後も組織全体としてはスリム化する傾向が続くとみられます。
3月23日 JR西日本など 特急くろしお号で和歌山の鮮魚を京都駅まで輸送・当日中に飲食店に届ける実証実験の実施を発表
【就活生の目線】
現在、物流業界では、2024年問題への対処が大きな課題となっています。2024年問題とは、トラックドライバーを含めた自動車運転業務について、年間の時間外労働の上限が2024年4月1日から年960時間となることにより生じる問題の総称です。例としては、トラック輸送の総量が減少することや、従来よりトラック輸送に時間を要するようになることなどが懸念されています。
従来、和歌山市中央卸売市場を経由した水産物は飲食店までの輸送をトラック輸送で行っており、45時間を要していました。
今回の実証実験は、鮮魚の輸送に和歌山方面と京都駅を結ぶ特急列車「くろしお12号」を利用することで、21時間の所要時間短縮を実現できるというものです。
JR東日本が実施する「はこビュン」の原形となったのも鮮魚輸送でしたし、数々の事例を見ると
比較的高単価(少ない輸送量でも採算が取りやすい)
列車に積み込めるサイズ(トラックより少ない輸送量)
鮮度が重要視される(鉄道の高速性・定時性が活きる)
というのは鉄道の貨客混載が活きる条件であるように考えられます。
地方創生や環境問題との関係も深い貨客混載について、鉄道就活応援隊で解説している記事はこちらです!
3月23日 西武鉄道 新卒初任給の引上げ・若手社員の賃金改善を発表
【就活生の目線】
新年度を間近に控えた春闘の時期ということで事業領域を問わず賃金引き上げの話題がニュースになっていますが、それは鉄道業界でも同様です。先ほど取りあげたJR東日本やJR西日本、そして関東の私鉄では東武鉄道が2023年度から初任給を引上げることを発表済みです。
3月24日 東急電鉄・東京メトロ 2028年度に東急田園都市線・東京メトロ半蔵門線へ無線式列車制御システムを導入することを発表
【就活生の目線】
鉄道就活応援隊で何度も取りあげている無線式列車制御システム。東京メトロは丸ノ内線での実証実験を進めるなど導入に向けた様々な動きを見せていましたが、相互直通運転を行っている東急電鉄と統一したシステムを導入することを発表しました。
無線式列車制御システムのメリットの一つに挙げられているのが遅延回復効果。相互直通運転は乗客の利便性を高める一方、ひとたび列車遅延が発生すると広い範囲に波及してしまいかねないため、無線式列車制御システムの導入は効果的であると考えられます。
無線式列車制御のメリットとしては、ほかにも
地上設備の簡素化による保守作業の効率化
(同じく地上設備の簡素化による)輸送障害の削減
(地上設備の設置位置に縛られない)柔軟なダイヤ設定の実現
などがあり、鉄道事業者および信号システムのメーカーからの関心も高く、鉄道においてホットな領域と言えます。
■関連リリース
東京メトロ-丸ノ内線で11月から無線式列車制御システム(CBTCシステム)の走行試験を開始したことを発表(2022年12月1日)
西武鉄道-西武線全線へのCBTC導入を目指す方針と多摩川線での実証実験実施を発表(2023年1月18日)
3月27日 東京メトロ 2025年度から丸ノ内線で自動運転の実証実験を開始することを発表
【就活生の目線】
日本国内の営業列車において、GoA2.5にあたる自動運転はいまだ実現していません。
より高度な自動運転であるGoA4の無人運転は複数の鉄道事業者で実現していますが、いずれも当初から無人運転をすることが前提として開業した路線ばかりです。
丸ノ内線のように運転士が乗務して運転してきた路線ではドライバレス運転が実現されていません。
それでも鉄道事業者にとって、ドライバレス運転は安全性の向上に加え、資格を取るのに長い年月・コストを要する運転士の数を減らすことなど、複数のメリットがあります。
その他の鉄道事業者にとっての自動運転のメリット、国内における自動運転の現状、課題についてはこちらの記事を参照してください!
3月29日 JR九州 鹿児島本線において「自動列車運転支援装置」の走行試験を実施することを発表
【就活生の目線】
JR九州では、GoA2.5にあたる自動運転の実現を目指し、香椎線において実証運転を実施しています。
今回新たに発表された「自動列車運転支援装置」は、香椎線での実証運転で得た知見を活かし、運転士の操縦を支援することを目的として開発された装置です。
運転士のボタン操作後、駅出発~駅停止まで列車の加減速制御を自動で行う点は一般的なGoA2.5にあたる自動運転と同じですが、運転士による臨機応変な手動介入が可能である点が特徴です。なお、駅に停車したり、信号で減速したりする際の制御は装置が行います。
また、既存のATS地上設備を活用することで、新たに地上設備を原則増やすことなく、また車上設備も簡素化できるとのこと。
とにかく就活生のみなさんとしては
取得にコストのかかる免許が必要な運転士の数を減らしたい
設置や維持にコストのかかる地上設備はなるべく減らしたい
という鉄道事業者の視点を理解しておくのが重要です。
3月31日 JR東日本 自社所有の光ファイバー回線と、丸の内ダイレクトアクセスの所有する大手町エリアの回線とを相互結合させ、東日本の広い範囲での光ネットワークを提供することを発表
【就活生の目線】
線路に沿って敷設され、鉄道事業を中心に自社利用されてきたJR東日本の光ファイバー。この回線を法人向けに貸し出すサービスの拡大を打ち出したのが2022年3月の社長会見・プレスリリース(リンク先PDF)でした。
鉄道の安全・安定輸送を支えてきた「高品質」・「低損失」・「高信頼性」を売りに、地域社会の発展やDX推進への貢献を掲げています。
広い意味では、高架下の活用などと同様「鉄道事業の持つ土地・設備の有効活用」「沿線価値の向上」と捉えて良いでしょう。この2つのテーマは鉄道事業者に共通する課題でもあるので、鉄道に関わる仕事を志す方は意識してください。
終わりに
3月のプレスリリースまとめは以上になります。
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