鉄道業界ひとくち解説「SDGsと鉄道」
鉄道に関わる仕事に就くことを目指して就活を進めている皆さんは、鉄道に関して様々なイメージを持っていることと思います。
SDGsとの関わりではどうでしょうか。
実のところ、鉄道業界の取り組みはSDGsと非常に関わりが深いのです。鉄道業界に就職することで、SDGsの達成に貢献できるかもしれません。
どうしてそう言えるのでしょうか。
今回の記事では、SDGsとは何かを軽くおさらいしてから、SDGsと鉄道業界の関わりについて説明していきます。
そもそもSDGsって?
そもそもSDGsとは何かを確認しておきましょう。定義を外務省のページから引用します。
環境破壊や格差の拡大、化石燃料の枯渇への懸念などによって人類の持続可能性が危ぶまれている中で、将来にわたり全人類が安定した生活を送ることができるようにしましょう、という目標です。
環境問題の文脈で聞くことが多いSDGsですが、その内容は実に幅広いです。17目標を見てみましょう。
解決すべき社会問題について、幅広い分野にわたって列挙されているのが分かります。たとえば、環境問題では6番・7番や13番~15番が該当します。そのほか「貧困をなくそう」や「飢餓をゼロに」など、様々な目標が盛り込まれています。
それでは、具体的に鉄道業界とSDGsにはどのような関わりがあるか、見ていきましょう。
鉄道業界とSDGsの関わり
鉄道は、環境にやさしい輸送手段です。その上、日常的な足になったり、沿線開発の起点になったりするように、地域との関わりが深い存在でもあります。そのため、鉄道に関わる企業の活動には、SDGsの17目標に関係するものが多いです。
環境問題への取り組み
近年では、消費電力を抑えた省エネルギーの電車を導入したり、ハイブリッド車両の導入や、カーボンオフセットの取り組みが注目されているところです。
実際の例は枚挙にいとまがありませんが、たとえば東海道新幹線の最新車両であるN700Sでは、先代のN700Aに比べて7%の消費電力削減に成功しています(JR東海 統合報告書2022より)。
また、ディーゼルエンジンを搭載した気動車の世界でも環境問題への配慮が進んでいます。
JR東海やJR西日本では、次世代バイオディーゼル燃料の導入に向けた実証実験が進められています。
従来のバイオディーゼル燃料を一般的なディーゼルエンジンで使用する場合は、軽油との混合割合を定めて使用する必要がありましたが、分子構造が軽油と同じ次世代バイオディーゼル燃料の場合は、一般的なディーゼルエンジンでも100%バイオディーゼル燃料の利用が可能になっています。
次世代バイオディーゼル燃料の実用化が実現すれば、地方路線を中心に運行されている気動車の運行によって排出される二酸化炭素は実質ゼロになります。
このように環境問題において、鉄道は様々な取り組みを実施しています。
環境問題以外の分野でも進む取り組み
鉄道業界は、環境問題以外でも様々なところでSDGsの達成に貢献する取り組みが行われています。
例を挙げると、
車両・駅施設のバリアフリー化→11番「住み続けられるまちづくりを」
鉄道構造物の防災・減災対策→11番「住み続けられるまちづくりを」
農産物を貨客混載で輸送するフードロス課題の解決→12番「つくる責任 つかう責任」
といった取り組みがあります。
なお貨客混載については以前の記事で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
新幹線に鮮魚を乗せたり、特急列車にエビを乗せたりする「はこビュン」など、いま注目の領域です。
また、鉄道事業に直接かかわらない分野においても
ダイバーシティ推進の社内プロジェクト立ち上げ→5番「ジェンダー平等を実現しよう」
コーポレートガバナンスの強化→16番「平和と公正をすべての人に」
地域活性化施策→11番「住み続けられるまちづくりを」・17番「パートナーシップで目標を達成しよう」
といったように、鉄道業界の取り組みとSDGsが交差する場面は数多くあります。では、実際に企業ごとの取り組みを調べてみるときはどうすればいいのでしょうか。
具体的な取り組みを調べる
企業ごとの取り組み
ここまで挙げたように、鉄道業界の各企業は様々な場面でSDGsに貢献しています。
こうなると、自分が就職したい企業を選ぶ上で、その企業がどのような取り組みをしているのかが気になる方も多いと思います。
詳しく見たい方は、企業によってはWebサイトに「社会環境報告書」を公開していることがありますので、その内容を確認してみましょう。
また、Webサイトで分かりやすく示している例もあります。
たとえば、熊本県で鉄道事業やバス事業を展開する熊本電気鉄道では、Webサイトで企業としての取り組みを掲載しています。
どの活動がどの目標に貢献しているのかが非常に分かりやすいです。
また、JR西日本のニュースリリースの末尾では、そのプレスで紹介された取り組みが17目標のどれに関わるものかが示されています。
こうしたところから、各企業がどのような取り組みを行っているか分かるはずです。
地域・企業をまたいだ取り組み
関東に路線を持つ大手私鉄の東急と、関西の大手私鉄の阪急・阪神が合同して、SDGsの認知向上や達成に向けた雰囲気醸成を目的とした「SDGsトレイン」の運行が行われています。
SDGsの17目標から色を採ったラッピングを車両に施し、見た目にも楽しいデザインになっています。
鉄道事業者が保有する車両や駅施設は、地域の利用者など多くの人の目に留まります。
カラフルなラッピング列車はSDGsの認知向上に大きく役に立つことでしょう。
まとめ
ここまでの記事の内容は、以下の通りです。
SDGsとは、国連サミットで採択された、2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標
SDGsの達成に貢献できるような仕事がしたい、という方にも鉄道業界はオススメ
環境問題以外にも、幅広い分野でSDGsとの関わりがある
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※2023年11月7日 N700Sの消費電力削減効果について言及した出典のリンク切れに対応しました。