【大学3年生は特に見てほしい】就活の会社選びや企業研究に役立つ! 鉄道会社の四半期決算短信を見てみよう
「会社についてより深く知りたい」
「情報量で他の就活生に差をつけたい」
「決算情報が参考になると言われて見たけど、いまいち何を見ればいいのかわからない」
この記事は、このような人に向けて書いています。
企業について知るためには、さまざまな情報源があります。
会社説明会の資料を見れば概ね知ることができますが、インターンの時期など、説明会が開催される以前の情報収集は案外難しいものです。
そんな時に頼りになる情報の一つが、決算情報。
決算情報の数字を見れば、その会社の財務状況から、事業ごとのバランスまでもが分かります。会社の経営状況を概観できますし、事業ごとの収益も見ることができます。決算情報から得られる情報量はとても多いのです。
その決算情報の中においても、作成頻度が高い、つまり見る機会の多い四半期決算短信について、その読み方や登場する用語について解説します。これから企業研究を始める大学3年生のみなさんや、早めに準備したいと思っている大学2年生のみなさんにもオススメです。
【投資家だけのものではない】四半期決算短信とはなにか
決算短信とは、企業の決算情報を迅速に公開することを目的とした開示書類です。上場企業は各四半期と決算月に、決算情報を取引所に対して提出することが義務付けられています。四半期末に作成されるのが四半期決算短信、決算月に作成されるのが決算短信です。
目的は投資家などに対する情報提供ですが、もちろん決算短信の中身は鉄道業界を目指す就活生にも役立ちます。
ちなみに事業年度の期間は会社が自由に定めることができますが、多くの企業では4月1日から翌年3月31日までの1年間を事業年度としています。
たとえば、「第1四半期」は「4月1日から6月30日までの3か月間」となるわけです。その場合のスケジュールは以下のようになります。
なお四半期短信と似たものに「四半期報告書」と呼ばれるものがあり、こちらは金融庁に提出されるものです。
この四半期報告書については、決算短信と重複する内容が多いこともあって、2024年4月1日の改正法の施行をもって廃止となる見通しです。
ちなみに、鉄道会社の2024年3月期第1四半期短信については、こちらのリンクから交通新聞電子版の記事が読めます。JR各社や大手私鉄についての四半期決算について、有料記事を特別に全文公開です!
「これを読めば自分で四半期決算短信を読む必要はないのでは」
と思う就活生の方もいらっしゃるかもしれませんが、新聞の記事は要約になっています。会社について知るための重要な資料である決算短信の読み方は社会人になっても役立つ技術なので、ぜひこの記事を読んでコツを掴んでいただければと思います。
まず見るべき数字はこれ
短信は2つの資料が一つのPDFにまとめられています。おおむね最初の1・2ページがサマリーで、3ページ目あたりのもくじから始まる部分が添付資料です。
四半期短信には多くの情報が盛り込まれていますが、会社の経営状況を大まかに知ることが目的ですので、すべての内容を確認する必要はありません。
最初に見るべき数字は、四半期短信の冒頭にあるサマリーに載っている売上高・営業利益・経常利益です。
①売上高
売上高とは、企業が提供する商品やサービスによって得た売り上げの合計です。鉄道会社の場合は、運賃収入のほか、多角経営を行っている企業ではレジャー事業や流通事業、不動産事業などの収入も含まれます。
②営業利益
営業利益とは、売上高から売上原価、販売費および一般管理費を引いた額です。ざっくり表現すると、本業での儲けを指します。
ちなみに数字の横に△がついている場合は、利益がマイナスになっていることを意味します。経常利益の場合も同様です。
売上原価とは、商品の製造や、サービスの提供に直接かかった費用を指し、鉄道会社の損益計算書では「運輸業等営業費及び売上原価」という表記です。乗務員や駅員の給与、線路や車両などの減価償却費などが含まれています。
売上原価を抑えれば営業利益が増えるので、鉄道会社各社も鉄道事業で例えると、運行ダイヤや駅に配置する人員を見直したり、ワンマン運転を導入したりするなどして売上原価の圧縮に努めています。
その合理化の極致ともいえるのが自動運転です。もちろん自動運転の導入目的はコスト削減だけではありませんが、列車の運転に必要な資格を取るにも多大なコストがかかっており、無資格の人間でも安全に運転ができるようになるだけでも鉄道会社にとっては大きなメリットがあります。詳しくは以下の記事をご覧ください。
販売費および一般管理費とは、商品の製造や、サービスの提供に間接的にかかっている費用を指します。鉄道会社の場合では管理系の社員の給与や、オフィスの維持管理費用、広告宣伝費などが含まれています。
③経常利益
経常利益とは、営業利益に営業外収益を足し、営業外費用を引いたものです。本業以外での収益も含めた、事業全体での収益を指します。
営業外収益とは、財務活動など本業以外での収益(助成金など)を指し、営業外費用は、本業以外で経常的に発生する費用(利息の支払いなど)を指します。
この経常利益に特別利益を足し、特別損失や税金を引いたものが当期純利益と呼ばれ、企業の最終的な儲けとなるわけです。
さらに深く知る
慣れてきたら、もう少しいろいろな情報を見てみましょう。
損益計算書を見ると、売上高や営業利益、経常利益それぞれの内訳を見ることができます。
また「四半期連結財務諸表に関する注記事項」を見ると、「セグメント情報」という項がある場合があります。グループ会社を抱え多角的に事業を展開する鉄道会社の場合、ここに事業別の営業収益が載っています。
事業ごとの売り上げを比較することで、不動産業に強いのか、はたまた流通業に強いのか、と言ったその会社の状況を知ることができるはずです。
各社の決算短信を編集部で読み解き解説している「決算短信からわかる! 鉄道業界 企業分析」も、ぜひ参考にしてください!
鉄道会社の決算短信を見る際の注意点
「定期」と「定期外」
鉄道事業の数字を見ると必ず出てくる「定期」と「定期外」についても確認しておきましょう。
そもそも、なんのためにこの区別はあるのでしょうか。
それは利用者の内訳をより細かく見ることで、利用実態の特徴をつかむことができるためです。
「定期」は、定期券利用者を指し、通勤・通学利用が中心です。沿線で閉校や事業所の撤退などがない限り、利用者数の変動は小さくなる傾向にあります。
一方で「定期外」は、定期券以外での利用者を指し、買い物や観光などでの利用が中心です。利用者数は社会状況や災害などの影響を受けやすく、変動が大きくなりがちです。
定期利用者の比率が高い線区は、一般的には沿線に著名な観光地がなく、沿線住民が買い物に行くのにも車を利用しがちな地方線区や、ベッドタウンと経済中心地を結ぶ通勤利用者が多い線区となります。
なお、地方では通勤利用において車が優勢になるため、通学定期の比率が高くなる傾向にあります。
「対前年比」には注意!
コロナ禍で行動制限があった時期とそうでない時期とでは、利用者数に大きな差が見られます。
例を挙げると、JR旅客各社が発表した2022年のお盆期間の輸送概況は、利用者ベースで前年の約2倍となりました。しかし、コロナ禍前の2018年と比べると、約6割に留まっています。
各社揃って対前年比で大きな伸びを見せていることからも、この変化には各社のサービス改善やコスト削減の効果だけではなく、行動制限の有無が大きく関係していることが分かります。
ほかにも、災害による運休など経営努力ではいかんともしがたい要因により、利用者数に大きな影響が出ることがあります。
決算についても、売上高や営業利益について前年比の数字を見る場合は、災害や感染症の影響などの状況を頭において考える必要があります。
特異な状況の影響を排除して考えたい場合には、それ以前からの変化を俯瞰して見ることが大事です。その場合には後述する「決算説明会資料」や「有価証券報告書」なども利用しながらコロナ禍前との比較を行うといいでしょう。
より視覚的に分かりやすく知る
上場企業の多くは、企業のWebサイトに決算説明会資料を公開しています。
後述の有価証券報告書に比べると情報量は絞られますが、就活生の皆さんが知りたいような情報を得るには十分です。
なにより図表が多いため、分かりやすい説明になっています。
たとえば事業ごとの売上高の比率について知りたい場合も、数字の羅列が多い決算短信や有価証券報告書に比べると、グラフが用いられた決算説明会資料の方がすぐに比較しやすいことと思います。
より詳しく知る
より詳しく、様々な数字を知りたくなった場合は、有価証券報告書を見るとよいでしょう。有価証券報告書とは、一定の基準を満たした企業が事業年度ごとに作成・金融庁に提出している企業情報の開示資料です。
提出義務のある企業が電子提出した有価証券報告書については、金融庁の所管するEDINETで検索すれば確実に見つかります。
それ以外では、Webサイトに株主・投資家向けのページを設けてPDFで公開している場合がほとんどです。
ただし、内容は数字と文字がほとんどな上に全体の量が膨大なため、いきなり読むのはお勧めしません。まずは短めの決算短信や、視覚的に分かりやすい決算説明会資料を見るといいでしょう。
やっぱり数字は苦手という人は……
「役立つことは分かったけど、やっぱり数字は苦手……」という方へ朗報です。文章で概要を知ることもできます。
添付資料を読み進めていくと、各事業を振り返っている項目があります。そこでは、「こういった要因があり、その結果営業収益が●●円だった」などと解説されています。原因と結果が分かる解説部分を読むだけでも。一つの情報となるのではないでしょうか。
さらに読み進めていくと、将来の予測についても言及されています。これは「目標達成のためにこういったことをやります」と宣言しているようなものなので、今後どういったかじ取りをしようとしているのかが見えてくる部分です。
まとめ
ここまで、決算短信の見方など、公開されている企業の決算情報をいかに活用するかについて解説してきました。
決算短信を見ることで、経営状況を概観できる
事業ごとの収益が分かり、会社の強みが分かる
決算説明会資料も併用すると理解しやすくなる
数字を前年と比較する場合はコロナ禍以前との比較も大事
近年は、就職活動が始まるのが早くなりました。大学3年生が夏のインターンを申し込む時期、つまり6月には会社説明の資料をオンラインで公開している会社も出ています。
そういった意味では、会社を知るために決算情報を見なければいけない必要性は以前より減少しているかもしれません。
ただ、決算情報の読み方や用語の知識は就活においてのみならず、社会人になったあとにも役立つものです。また、投資を行う場合には当然ながら重要な判断材料ともなります。
比較的読みやすい決算短信や決算説明会資料を足掛かりにして企業のことについて調べながら、普遍的に役立つ用語や知識を身につけていくといいでしょう。
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