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路線長最短の大手私鉄、稼ぎ頭は○○事業!【就活生向け・決算短信を読む⑰相模鉄道(相鉄HD)】

大手私鉄の一角でありながら長らく神奈川県内でのみ運転しており、そのため地元の利用客以外には意外と知られていなかった鉄道会社といえば、相模鉄道でしょう。
そんな相鉄も、現在ではJR、東急との直通線を開業させ、多くの鉄道事業者と直通運転をする会社となりました。相鉄のネイビーブルーの車体を都心で見かけて新鮮さを感じた方も多かったのではないでしょうか。

現在では持株会社制に移行しており、相鉄ホールディングスの子会社となっている、相模鉄道。この記事では、そんな相鉄ホールディングス(相鉄HD)の決算短信に掲載されている収益の数字や事業構成などを通じ、相鉄の今が分かることを目指します。

そして、鉄道業界各社の決算短信については、こちらのリンクから交通新聞電子版の記事が読めます。JR各社や大手私鉄の決算短信について、有料記事を特別に全文公開です!

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リンク先では、鉄道業界の様々な企業の決算短信についても分析がありますので、ぜひご参照ください。


相模鉄道とは

相鉄のネイビーブルーをまとった12000系(右)は、相互直通運転を実施しているJR東日本の線内でも目立つ存在です。 撮影:交通新聞クリエイト

相模鉄道は、神奈川県に3つの旅客営業路線を保有する鉄道事業者であり、相鉄グループの中核企業となる会社です。

そのルーツは、1917年のほぼ同時期に設立された相模鉄道神中鉄道の2社です。相模鉄道は茅ヶ崎~橋本間を開業し、神中鉄道は横浜~海老名間に路線を開業させました。その後1943年には相模鉄道が神中鉄道を吸収合併し、新たな相模鉄道が発足しています。

戦中の苦難・戦後の混乱を乗り越えた相鉄は、車両・設備の充実、あわせて経営の多角化を志向しました。

鉄道業では、増加していく輸送量に対応し、車両の新製、複線化、駅の改良などに着手したほか、沿線開発と一体的に建設される新路線として、いずみ野線を開業しました。

それ以外の事業では、休止していたバス事業を再開し、新駅設置とその周辺での建売住宅の分譲を合わせて行う沿線開発を進め、ターミナル駅である横浜駅西口では広大な土地を取得するとともに、繁華街の形成を目指して開発を進めました。

発展を遂げた相鉄は1990年には日本民営鉄道から承認を受けて大手私鉄に加わるに至り、バブル崩壊後の事業再編期を経て、持株会社制への移行を行い、現在の体制となりました。
2019年にはJR直通線、2023年の相鉄新横浜線開業によって悲願の都心直通を成し遂げ、現在に至ります。

営業収益・営業利益・経常利益

まずは基本の数字、ということで相鉄HDの営業収益・営業利益・経常利益について見ていきましょう。

営業収益:2,497億円(対前期15.2%増)
営業利益:143億円(対前期258.9%増)
経常利益:127億円(対前期286.6%増)

相鉄ホールディングス「2023年3月期決算短信(連結)」より

コロナ禍の影響から移動需要が一部回復したことや、2023年3月に東急線との直通運転を開始したことなどにより、対前期で増収増益でした。
なお、コロナ禍の影響が少なかった2020年3月期と比べると以下の通りです。

他社と比較すると営業収益・各利益ともに差が小さく、コロナ禍からの回復が進んでいることがわかります。
なお、先日公開された2024年3月期第2四半期決算短信によると、営業収益・各利益ともに今期(2024年3月期)は前期を上回るほか、営業収益はコロナ前をも上回る見込みです。

【就活生注目】相鉄HDの特徴・事業構成

ここからは、決算短信から読み取れる相鉄の特徴を探ってみましょう。まずは事業構成と収益構造からということで、セグメント別の営業収益の割合は以下の通りです。

鉄道・バスが入る運輸業の割合が低く、最多の流通業についても4割には届きません。鉄道事業の割合が低いタイプのバランス型の構成といえるのが特徴です。

運輸業では、鉄道・バスの2事業を展開。セグメント単位で見ると増収を達成してはいるものの、営業利益は赤字を計上しています。

流通業では、神奈川県を中心に50店舗以上を出店するスーパーマーケット「そうてつローゼン」の経営、フランチャイジーとしての「ファミリーマート」店舗展開などを行っています。

不動産業では主に沿線の住宅や集客施設の賃貸・分譲を行っており、営業利益が最も多いセグメントです。特に、ターミナル駅である横浜駅西口には「相鉄ジョイナス」をはじめとした多くの賃貸施設を所有しており、象徴的な存在です。

ホテル業では、相鉄フレッサイン・相鉄グランドフレッサなど複数のホテルブランドを全国で展開し、国外にも進出しています。

その他のセグメントには、ビルメンテナンスなどの事業が入ります。

相鉄HDの強み

強み:堅調な不動産業

先に述べた通り、相鉄でもっとも多くの営業利益を稼ぎ出しているセグメントが、不動産業のセグメントです。
相鉄グループの「長期ビジョン」においても不動産事業を指して「収益の柱」とする表現が用いられており、その不動産業の強化として賃貸物件の取得、既存物件の収益改善などの取り組みが記載されています。

相模鉄道|「相鉄グループ長期ビジョン “Vision2030"」より引用

また、近年では相鉄本線星川~天王町間の連続立体交差化事業で生じた高架下の空間を利用し、星天qlayを2023年2月に第1期という形でオープンしました。店舗だけでなく、レストランや住居、コワーキングスペースといった多彩な空間を確保していくとのことです。

ほかにも相鉄沿線では現在進行中の横浜駅きた西口鶴屋地区再開発事業をはじめとした大規模な開発計画が推し進められてきました。
相鉄グループ統合報告書2023」などによると、それらを総称する「沿線開発6大プロジェクト」は2024年度中には終了しますが、既に新たな横浜駅西口の再開発構想も持ち上がっており、今後計画が具体化されるとのこと。

今後も相鉄グループにおいて不動産業が重要な位置を占めるには変わりない見込みであり、また沿線での動きについては、鉄道との関わりにも注目です。

新たな強みとなるか、ついに始まった都心直通

東急線との相互直通運転開始前には、新たに形成される鉄道ネットワーク7社局の車両を集めた報道向け撮影会も行われました。 撮影:交通新聞クリエイト

 長らく自社線内、つまり神奈川県内で完結する運行を継続してきた相鉄線ですが、2019年11月30日にJR線との直通運転が、東急線との直通運転が開始され、2通りのルートで都心への乗り入れを果たしました。
大手私鉄の中では路線長が短く、沿線の開発も成熟しつつあったために鉄道業で劇的な成長を見出すことが難しかった相鉄にとっては、久々となる新たな路線開業です。

コロナ禍の影響が残る中での開業ということもあり中長期的な変化はこれから表れるものですが、新たなルートを開拓したことによる流動の変化・増加が期待されます。

決算短信から読む相模鉄道の今後

営業利益に注目すると、不動産事業が安定した利益を生み出している一方、そのほかのセグメントがやや苦戦気味です。

短期的にはコロナ禍の影響が低減することで増収が見込まれるところではあります。
中長期的には、堅調な不動産事業で利益を維持・あるいは増加させ、それ以外の運輸、流通、ホテルの3事業でいかに利益を確保していけるかがカギとなりそうです。

まとめ

関連リンク

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今後も、鉄道事業者については、売上高の規模の違いなどに留まらず、グループ全体の売上や利益について鉄道事業が占める割合の違いなどに注目して取りあげていきたいと考えています。もちろん鉄道事業者以外の企業についても取りあげる予定ですので、お楽しみに!
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