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「ここは乗り心地が良くなったな、と列車に乗りながら自分の仕事の出来を実感しています」鉄道の安全担う確かな技術と若さが輝くゲンバ【社員インタビュー:東鉄工業・レール交換作業の施工管理】

鉄道に関わるお仕事に携わっている方へインタビューを通じて。その仕事についてのお話を伺う「鉄道ゲンバ最前線!」。

第9回は東鉄工業株式会社 千葉支店へお邪魔しました。東鉄工業株式会社は線路事業・土木事業・建築事業・環境事業の4事業を展開し、鉄道を中心とする交通インフラのメンテナンスや駅舎・公共施設などの施工を数多く手がけています。

今回はレール交換の計画担当である治田さんへインタビューしました。首都圏の鉄道の安全を支える責任感、そしてやりがいを感じる若手のゲンバならではの熱い職場の魅力をたっぷり伺いました。

それではどうぞ!

自己紹介と入社のきっかけ

――本日はよろしくお願いいたします。早速ですが、自己紹介と入社のきっかけをお聞かせください。

治田 よろしくお願いいたします。東鉄工業株式会社 千葉支店線路部船橋出張所 主任の治田陽祐(はったようすけ)と申します。入社7年目で今年29歳になります。

もともと交通インフラに興味があり、大学時代も交通工学を専攻し、高速道路の研究に着手していました。もちろん鉄道も好きです(笑)。高校時代から鉄道業界を目指していて、鉄道好きが高じて交通工学や鉄道工学を学び、それがきっかけで東鉄工業株式会社を志望しました。

 

千葉支店の会議室で取材に応じてくれた治田さん。

現在のレール交換担当業務について

――現在の業務はどのようなものですか?

治田 現在の業務は主にレール交換作業の施工計画と責任者として現場の施工管理を担当しています。

 ――レール交換作業の施工計画とは?

治田 施工計画とは施工日(レール交換作業の日)をいつにして、どれくらい人を割くのか、またどれくらいの時間をかけるのか計画していく業務です。
時間も大事ですが、作業は安全を第一に考慮して進めなくてはなりません。現場によって安全への配慮が必要なポイントも変わってくるので、そういったことも検討しながらレール交換作業の計画を立てます。

ちなみに昨年は150件のレール交換作業を計画しましたが、レール交換作業は作業当日だけでなく、細かい準備作業もいっぱいあります。
例えば交換するレールを用意したり、ロングレール*を扱う現場となればレールとレールを溶接する作業も必要になります。そういったレール交換作業の本番に向けた付帯作業も計画していかなくてはなりません。

*ロングレール…音や振動の原因となるレールの継目を無くすために、複数の短いレールを溶接で1本につないで200m以上の長さとしたレール 

書類仕事や打ち合わせも多い仕事とのこと。

――責任者としての現場管理とは?

治田 ひとくちにレール交換作業といっても、交換するレールの延長が短いものから長いものまで様々あります。 特に200mを超える大がかりな作業になると最高責任者として現場に立ち会わなければなりません。
それが責任者としての仕事、要するに現場監督です。昨年も多くの現場に責任者として従事させてもらいました。 

――どのような経緯を経て今の責任者となりましたか?

治田 責任者は資格が必要なのですが、取得には2年ほどの経験が必要です。さらに最高責任者となると3年以上の経験が必要になります。その期間は先輩に付いていって実際の現場を見て学んでいきます。

ちなみに同期入社は70名ほどでしたが、線路部門に配属となったのは全社で20名ほどいます。

勤務状況について

――勤務状況を詳しく教えてください。

治田 基本的な勤務体系は昼8時間働いて夜勤まで休憩を取り、夜は現場と書類整理などで6時間働きます。夜勤が明けるとその日は明休という2日間のパターンです。夜勤も一勤務なので、一般の日勤の人の2日分の労働を先にやってしまって、残りの時間を休みにしていると言えばイメージが湧きやすいと思います。 

線路メンテナンス工事は営業列車の走らない夜間に行われるので、必然的に夜勤が多くなります。現場にもよりますが、船橋出張所では1カ月にだいたい10~12回くらいです。

業務内容は、日中は夜間作業に向けての打ち合わせなどのデスクワークがメインになってきます。夜間の現場でのレール交換作業自体は、ほとんどが1日で終わります。始発列車が走る前に全てを終えなくてはならないので、責任感を持って従事しています。

日勤の場合のスケジュール例。事務所でできる仕事が中心となる。
夜勤の場合のスケジュール例。こちらは現場作業が中心となる。

――担当エリアはどのあたりですか? また繁忙期はありますか?

治田 千葉支店線路部船橋出張所は主に総武線の東京方面~千葉の複々線区間を受け持っています。列車がどれくらい通ったら交換するといった、予防的な定期のレール交換作業は年間150件ほどあります。150件全ての施工計画を私が担当しているのですが、それに加え年に数回、保守用車(レール探傷車)がレールの傷を見つけた場合は、緊急の対応が必要になる場合もあります。

 傷の内容にもよりますが、傷からヒビになる前にレール交換作業をしなくてはならないので、そういう時はやはり忙しくなります。また通常のレール交換作業で重複する時も忙しくなります。

――休日と残業について伺いたいのですが。

治田 休日の日数は所定の労働時間に対して決まるので、日中の一般的な勤務の人と変わりません。

オレンジ色が日勤、青色が夜勤。この2日セットが基本となるのだそう。

 残業は日勤で多少ありますが、夜勤の残業はありません。レール交換の場合、始発列車が走り始めるまでに必ず作業を終わらせる必要があるので、残業はできませんからね。

 休日は比較的しっかり取れることもあって、社内で知り合って結婚した妻と最近生まればかりの子どもと3人で過ごす時間や、趣味の鉄道模型などを目いっぱい楽しんでいます(笑)

模型を手に笑顔の治田さん。なんとも幸せそうな表情です!(写真提供:東鉄工業)

――大変なこと、そしてやりがいや達成感を感じるときはどんな時ですか?

治田 レール交換作業だけでなく、他の保線作業も含めて準備から段階を踏まなくてはならないことも多いです。

 年間150件分の資材や機材のやりくり、人員調整などの計画を練ることは大変ですし、作業区間が長くなればなるほど、その施工計画はより複雑になります。

ですが大変であるからこそ、首都圏の大動脈の一つである総武本線の複々線区間の列車の安全と快適さを担っていることに大きなやりがいを感じています。なのでレール交換作業を滞りなく終えたときは大きな達成感を得られますね。

 担当エリアが通勤路線でもあるので、「ここ、乗り心地が良くなったなあ」と列車に乗りながら自分の仕事の出来を実感しています(笑)

――思い入れのある仕事はありますか?

治田 今までで一番印象に残っている仕事は入社4年目にして400m超のレール交換作業を担当したことですね。

 当時は軌道工事管理者という、一番上の責任者の資格を取ったばかりでした。作業区間は長ければ長いほど班が多くなり、各班の責任者の確認や指示などが増えるので複雑になります。各班の作業進捗状況によって指示や対応を変える必要があります。責任者としてはまだ不慣れなこともありましたし、緊張もしていました。

 ただ作業当日に向けて、発注者であるJR東日本も含めた検討会などを通じ連絡を密に取っていましたので施工計画も万全でした。おかげで無事大きな仕事を成し遂げることができました!

 ――仕事をする上で心がけていることは?

治田 仕事で一番心がけていることは「安全」ですね。

 線路工事の仕事というのは時間と安全が大きく関係しています。レール交換作業を丁寧かつ安全に進めるためにも、作業時間に余裕を持たせた無理のない施工計画を立てるように気を付けています。そしてその計画に基づいた丁寧な作業こそが鉄道利用者の「安全」に大きくつながっていると思っています。

安全のためにも、しっかりとコミュニケーションを取りながら進めるのが大事なのだと言う。(写真提供:東鉄工業)

職場について

――船橋出張所の雰囲気はいかがですか?

治田 船橋出張所は20~30代前半の若手がかなり多くて、入社7年目の私でも古株になってしまいます(笑) 若手同士、歳の近い人たちが多いので話がしやすいですね。仕事の相談も「ベテランの先輩だから聞きにくい」ということはありません。私はどちらかというと相談される側なのですが、船橋出張所は以前からそういう雰囲気でした。

 感染症の自粛期間前は懇親会も年に数回あって、休日は気心の知れた同僚らと遊びに行ったりもしています。船橋出張所は先輩後輩も含めて、お互い話しやすいといった雰囲気を強く感じますね。

 ――東鉄工業に入社して良かったと思うことは?

治田 世の中に建設業の会社は数多くありますが、線路の敷設やメンテナンスをできる会社というのは全国でもごくわずかです。だからこそ我が社は専門性が高く、他の会社ではできないことをやっているという誇りがあります。

また首都圏の大動脈の安全を担う使命感と、社会的貢献ができていることにやりがいを感じています。それが東鉄工業に入社して良かったと思うところです。

 ――業務にあたって必要な資格の取得や自己成長を支援する制度はありますか?

治田 レール交換作業の施工計画と現場の監督をするためには、保線作業時に線路閉鎖手続き*をする責任者である「線閉責任者」と作業現場での一番上の責任者である「軌道工事管理者」の二つの資格が必要になります。

 *線路閉鎖手続き…安全のため列車を作業区間に進入させないようにする手続きのこと。

 大卒であれば3年目で「線閉責任者」、4年目で「軌道工事管理者」の資格取得が可能になります。さらに自己成長にもつながる資格に「一級土木施工管理技士」があります。これは土木系資格でも難易度の高い国家資格ですが、事前対策講座などの勉強会が会社の研修制度にも含まれています。

 加えて受験費用の負担など、会社が資格取得に向けての支援をしてくれますし、さらに資格を得れば資格手当も付きます。もちろん私も取得しました!

――学生時代から成長したと感じるところは?

治田 大学生の頃は先輩・後輩の身内的な関係で話すことが多かったですが、目上の人と話す機会は少なかったです。ところが会社に入ると発注者であるJR東日本や協力会社などの社外の人と打ち合わせをする機会が多くなります。

最初は大変でしたが、次第に様々な人とコミュニケーションがとれるようになりました。仕事を確実に進めるためには多くの人に相談や確認をして協力関係を築くことが大切ですし、そのためのコミュニケーションの重要性というのも感じています。それが学生時代から成長したと感じるところですね。

学生の方へのメッセージ

――就職活動をしている学生さんへのメッセージをお願いします。

治田 私は元々鉄道工事に興味があったのですが、東鉄工業は首都圏で運転本数の多い路線のメンテナンスを担当しているので、現場でバリバリ仕事ができてやりがいがあるのではと思いました。それが入社志望のきっかけになりました。

だから、今就職活動をしている学生のみなさんに対しては、自分のやりたいことをより明確にすることが大切だとアドバイスしたいですね。

 自分のやりたいことがはっきり分かっていれば、自ずと会社を選びやすくなります。また仕事を続けていくには自分のやりたいことと会社の仕事内容が合致していることが大切です。鉄道業界も幅が広いので「なんとなく鉄道業界が良さそう……」と思って入社したら自分のイメージとギャップがあったという話も聞きます。

 そんなことにならないよう、社会人としての理想の自分を思い描き、その理想像に会社が合っているかどうかをしっかり調べたうえで就職活動に臨んで欲しいと思います。

 ――本日はお忙しいところ、ありがとうございました。

千葉支店の入口で一枚。

終わりに

日本各地では毎日数多くの列車がたくさんの乗客や荷物を乗せて行き交っています。人や荷物が目指す駅は様々ですが、鉄道会社が目指す理念は「安全」と「安心」。
私たちが当たり前のように感じている鉄道の「安全」と「安心」は、実は見えないところで多くの人のたゆまぬ努力によって成し遂げられているのです。

今回インタビューした治田さんは鉄道の「安全」と「安心」を担うレール交換作業という仕事に、誇りと向上心を持って努力を続けている方でした。
列車のスムーズな乗り心地の実現は、治田さんの様な人たちの熱い思いと技術が現れているに違いありません。私たちがまだ知らない鉄道のプロフェッショナルな世界を垣間見た取材でした。

今回紹介させていただいた会社

東鉄工業
JR東日本の各路線を中心とした鉄道関連工事のリーディングカンパニー。線路事業、土木事業、建築事業、環境事業の4事業を展開し、高い専門的技術力と高品質な施工実績によって安全で快適な交通ネットワークと社会基盤の創造に貢献する建設会社です。今回は千葉支店にお邪魔し、取材させて頂きました。

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なお東鉄工業に関してのニュースを知りたい方は
>>直近1年間の交通新聞電子版における「東鉄工業」検索結果
もご覧ください! この交通新聞電子版のリンクからは、本来は有料となっている記事も無料で閲覧可能です。ぜひご活用ください。

2023年3月取材
撮影・聞き取り:助川康史(マシマ・レイルウェイ・ピクチャーズ)
企画・構成:交通新聞社
※記事中の情報は、この記事を公開した当時のものです。
※採用についてではなく記事の内容についてのお問い合わせは、交通新聞社HPからお願いいたします。掲載されている企業・個人へのお問い合わせはご遠慮ください。

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