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感覚を研ぎ澄まし、美しさを追及! 『匠』の技術と経験が光る新幹線車両の塗装の仕事【社員インタビュー:JR東日本テクノロジー(株)】

鉄道に関わるお仕事に携わっている方へインタビューを通じて、その仕事についてのお話を伺う「鉄道ゲンバ最前線!」。

前回はJR東日本テクノロジー株式会社東京支店へお邪魔しましたが、第16回となる今回は宮城県宮城郡利府町にあるJR東日本テクノロジー株式会社新幹線事業所へお邪魔しました。ゲンバはなんと東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)新幹線総合車両センター内にあります。お話を伺うのは新幹線事業本部新幹線事業所塗装課主任技術員 佐藤秀輝さん。

佐藤さんは新幹線車両塗装一筋のエキスパート! 技術と経験を活かし、感覚を研ぎ澄まして新幹線車両を美しく仕上げます。無二の存在である鉄道職人の『匠』を目指す学生さんは必見です!
それではどうぞ!


自己紹介と入社のきっかけ

――本日はよろしくお願いいたします。早速ですが、自己紹介と入社のきっかけなどをお聞かせください。

佐藤 今日はよろしくお願いします。JR東日本テクノロジー株式会社新幹線事業本部新幹線事業所主任技術員で、入社27年目の佐藤秀輝(さとうひでき)です。入社は東北交通機械株式会社(2015年にJR東日本テクノロジー株式会社と会社統合)からです。

鉄道が趣味とは言えませんが、時刻表を見ては自宅から遠くに走る鉄道車両を眺めることが好きな少年時代でした。それで鉄道という公の仕事をしたいと思ったことが入社のきっかけでした。鉄道関連の会社という経済的安定感も魅力に感じました。

入社から現在に至るまで

現場に出るだけでなくデスクワークも行う

――入社後に配属された部署と現在の部署、そして現在の業務内容を教えてください。

佐藤 入社1年目は台車課に配属され、輪軸検修を担当していました。2年目に車体塗装課に配属されて、現在に至ります。新幹線車両の車体外板塗装一筋と言ったところですね。他には車内の塗装が剥げてしまったところのタッチアップ塗装も行います。

また、所属班のリーダーとして班員のマネージメントや安全・品質・環境の維持と向上に努めています。安全に関しては仕事柄、有機溶剤を多く取り扱うので、班員が保護具を的確に取り扱っているのかなど、品質に関しては塗装の仕上がりは温度に影響されやすく、日々変わる気象条件に適応できるように作業の段取りを指示し、いずれは班員が自発的にこれらを執り行えるように日々、指導を行っています。

――若手時代にご苦労されたことは何ですか

佐藤 塗装に関するありとあらゆる技術を同時に身に付けることです。今は整備されていますが、当時はマニュアルと呼べるものは特に無く、先輩の所作を見て現場と現物で覚えるしかなかったのが大変でした。

ただ先輩方からは優しく教えてもらえたので、徐々に塗装の腕は上がっていき、手吹付塗装(手塗り)などを難なくできるようになりましたが、25年以上経った現在も学ぶことは多いですかね。

――若手時代の先輩の教えで、今も大切にしていることはありますか

佐藤 「自分の身は自分で守る」です。現場では塗料や希釈剤は有機溶剤を使いますし、高所での作業もあります。大きい機械を使うこともあるので、危険が無いわけではありません。現場では常に安全行動を意識し、慎重に作業を進めることが大切です。

――思い入れのある仕事や印象に残った出来事はありますか

佐藤 色々とありますが、リーダーを務めるようになってからの思い入れのある仕事はE2系(J66編成)とE3系(L65編成)リバイバルカラーの塗装です。カラーチェンジは何度か経験しましたが、リバイバルカラーの塗装工事は初めてだったので印象に残っています。

E2系には新幹線200系(左)、E3系には「銀つば」ことE3系つばさ(右)のカラーリングがそれぞれ施された(写真:交通新聞クリエイト)

 作業自体は、もう一人のリーダーと主導したのですが、頂いたデザイン図面から実際にどのように車両に施していくかが腕の見せ所でした。車体はまっすぐな板だけではなく、流線形の部分もあるので、型紙通りにはいかないのです。最後は自分の目で細かく確認しながら作業を進めました。

塗装は下地作りも大切です。古い塗装を綺麗に除去しなくてはならなく、またボディのひずみをパテで埋めるなど時間はかかります。ワンメイクの特殊な塗装でしたが、それでも1週間程で1編成の塗装を終えました。200系のカラーリングを知らない若手もいるので資料を見せながら、総力を挙げて仕上げました。

――「これは他社に負けない・業界トップクラス」と自負していることを教えてください。

佐藤 新幹線事業所の中でも塗装課は職人集団と呼ばれていますが、車両の手吹付塗装の技術と塗装の質では業界トップクラスと自負しています。塗装を全自動化している車両整備場もあるようですが、私たちは機械での塗装のほかに、手吹付塗装ならではの繊細な塗装技術を活かし、先頭部や広い面積などさまざまなデザインに対応して1週間かからずに1編成仕上げます。

もちろん塗装の機械化は進んでいます。ですがJR東日本の新幹線車両は事業用車まで含めるとカラーリングは9種類あり、また先頭車両の複雑な曲線部分はもちろん、経時によるボディの歪みなど、実は同じ車両でも1両ごとに微妙な違いがあります。それらを機械に全てティーチング(プログラム)させるにはどうしても時間がかかってしまいます。

しかし手吹付塗装なら塗装面の微妙な違いもその場で対応できるので、複雑な形状でも機械より迅速に美しく仕上げることができます。また気温や湿度、何回目の塗装かなどの条件によって塗料を微妙に調整するのですが、それこそ目と感覚を頼りに作業を進めます。新幹線車両を工芸品として仕上げる、まさに職人の現場だと思います。

E3系を手吹付で塗装していく様子

――塗装課の一日のスケジュールを教えてください。

佐藤 作業の割り当てを私が行い、割り当てを基に班単位で活動します。

――残業はありますか。

佐藤 残業は月に20時間程度あります。先頭車のような作業に多くの手間がかかる時には残業が生じやすいです。

塗装の仕上がりと乾燥具合を確認

――若手の育成や後進の技術継承はどのように進めていますか

佐藤 今はベースとなるテキストもあるので作業内容を前もって勉強することはできます。ただ塗装作業は目で見て手で触れて感じることが大切です。現場でやり方を見せて、実際にやってもらうことの繰り返しで経験を積み重ねていきます。その形は昔と変わりません。

また新人には時間を設けて車両のモックアップなどを使用し、直接教えながら塗装の練習をしてもらうこともあります。塗装だけでなく、塗装前の削り出しやパテを使った修繕と研磨、そしてマスキングなど多くの知識と技術が必要になりますので、それも併せて覚えてもらいます。私が新人の頃と比べて人材の育成や技術継承をする環境は充実していると思います。

乾燥したら次の工程へ車体を移動させる

――鉄道業界(車両メンテナンス)を目指す若手への想いや希望を教えてください。

佐藤 この業種は大学や高校を卒業した時点では未経験という人ばかりです。また感覚や経験が重要な世界なので、文字や画像を用いたマニュアルで伝えることにも限界があります。だからこそ先輩方とコミュニケーションを取って助けてもらいながら、何事にもトライする気持ちを持って臨んでもらいたいです。そして自ら正しい道を考え、判断し、行動できる人材に育って欲しいです。また何より人生を楽しめる人に来て欲しいですね!

マスキングを剥がす様子

――今後の目標などございましたら、教えてください。

佐藤 塗装技術に関する指導者の育成です。技術は自らが実践して覚えることもあれば、後進を指導することで覚えることもあります。それがしっかりできる人材をどのように育てるかが今の課題であり、そういう道を確立することが私の目標です。

社風について

――新幹線事業所では仕事以外で社員同士のコミュニケーションはどのように取っていますか

佐藤 会社でレクリエーション(旅行会)があり、毎年さまざまなプランが十数件企画されています。年に数回ですが職場の懇親会もあります。また若い人同士や同じ趣味同士で、仕事終わりに食事をしたり、休日に集まってプライベートで楽しんだりしているようです。私の場合はゴルフです。社内のゴルフ好き10人くらいで集まってコンペを開催しています。

――客観的に見て、塗装課の雰囲気はどのように感じますか

佐藤 塗装課の半分近くは20歳代と比較的若い職場なので、新人でも話しやすい環境だと思います。静かな人が多いので表向きおとなしいですが、同世代だけでなく年齢が離れていても、趣味などの共通の話題で一緒に盛り上がることもあります。

剝がし残しがないように確認しながら作業

就活生へ向けて

佐藤 先ほど言ったことにもなりますが、自分で行動し、試さないと得られない物もあります。積極的にたくさんのことに挑戦してください。

――本日はお忙しいところ、ありがとうございました。

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おまけ:社員食堂に潜入!

今回は特別に新幹線総合車両センター食堂(社員食堂)を利用させていただきました。株式会社エヌアールイーサービスが運営しており、JR東日本やJR東日本テクノロジーをはじめ、ここ新幹線総合車両センター内で働く社員が利用しています。

名物の『特製牛タン旨カレー』

メニューは、日替わり定食2種類、カレーライス、ラーメン、調理長自慢の一品料理と内容もボリュームも充実。売店も併設されており、アイスなどの甘味もそろっています。

日替わり定食はお肉とお魚の2種類。今回はお肉をチョイス

『特製牛タン旨カレー』は口の中でホロッとくずれる牛タンの旨味とまろやかで深いコクでたまらない! そして香り高いスパイスが奏でるハーモニーがさらに食欲をそそります。これが社員食堂で味わえるとはレベルが高い!

ということで食堂の所長で調理長の佐藤道之さんに話を伺ったところ、市販のカレールーは使用せずに、国産の牛脂とスパイスを調合して調理しているとのこと。この味へのこだわりが働く人々の午後の活力となっているに違いないと感じました。

終わりに

塗装を終え、次の工程へ

快適に過ごすためには内装も大事ですが、第一印象は外観で決まると言っても過言ではないと思います。車両を見たときのワクワク感や高揚感といった旅の演出は、こういった匠の技に支えられているのだと感じました。

今回紹介させていただいた会社

JR東日本テクノロジー株式会社
鉄道車両における開発・設計・メンテナンス・改造・車両基地設備の一貫した技術サービスを提供するJR東日本グループ内、唯一の総合エンジニアリング企業です。卓越した技術力を持ち、向上心に満ちたプロフェッショナルが鉄道インフラを力強く支え、安全、快適で環境に優しい社会の実現に貢献しています。

今回はJR東日本テクノロジー新幹線事業所にお邪魔し、取材させて頂きました。

JR東日本テクノロジー株式会社の公式ウェブサイトはこちら。

2023年10月取材
聞き取り・撮影:助川康史(マシマ・レイルウェイ・ピクチャーズ)
企画・構成:交通新聞社

※記事中の情報は、この記事を公開した当時のものです。
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